芭蕉林通信(ブログ)

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2020年10月02日 正代関の母校・東京農大の思い出

 郷土出身の正代関が念願の初優勝を遂げ、天災の多い熊本に久々の明るいニュースを届けてくれた。正代関は東京農大在学中に学生横綱になったのだから、次は是非角界の横綱を目指してもらいたい。と思っていたら、50年前学生時代にテニスの試合に出るため東京農大を初めて訪問したことを思い出した。

 小田急線の経堂駅で降りバスに乗り換えると、バスは市街地の狭い道路を家を掠めるようにして農大に向かった。大学の広大な敷地に入ると、テニスコートまでの道の右手に相撲部の練習場が見えた。塀には使い古し汗ばんだ相撲まわしが数本干してあり、相撲部のない大学出身者としては初めて見る光景に驚いた。正代関のまわしを見たのだったならば自慢できるのだが、あいにく世代が随分と違う昔の話である。

 そして何よりも驚いた事件はその後に起こった。テニスの大学対抗戦が始まってすぐにとんでもない闖入者が現れたのである。それはテニスコートの横にある乗馬部の一頭の馬であった。柵を乗り越えて来た馬は一瞬にしてテニスの試合を中断させ、プレーヤーは驚愕し命がけで逃げ惑ったのである。人間は、日常普通のことではなく思いがけないことを記憶するものである。日米最初のテレビ実況中継がケネディ大統領の暗殺事件を報道し、長く日本人の記憶に残ったのに似て、私は東京農大を訪れたこの一日が今でも忘れられない。

2020年10月01日 酔芙蓉の一番花

 9月始め「毛虫とオーガニック野菜」というブログで紹介した酔芙蓉の一番花が咲いた。それは今や日課となっている毛虫退治の最中、突然目の前に現れた。早朝のことなので、花弁は白く輝き雄しべは薄黄色で限りなく美しく見えた。生まれてこのかたこれほど世話した花はない。だからこそ愛着もひとしおなのだ。想いをかける姫君のために命をかけた中世の騎士さながら、いやドン・キホーテに似て、私は想い花を毛虫から守り通したと思った。

 その日は一日中観察した。いつから、又どうやって白い花が紅く染まるのか、花はいつまでもつのかと疑問は尽きない。ただ酔芙蓉の名前にふさわしい変化を見るのが楽しみだった。酔芙蓉は茶花(ちゃばな)として人気がある。それはわずか一日で花を閉じるはかなさゆえに、茶道の一期一会の精神に合致しているからかもしれない。

 観察した結果、一輪の花はまず白い花弁の先からほんのり紅くなり、夕方には全体を紅く染めて閉じた。家人によれば、茶人は酔芙蓉の花を翌日まだもたせるために、咲く直前の蕾を摘んで氷水に首まで浸けるそうである。次なる挑戦はいかにして翌日まで花を咲かせられるかである。この数日は、恥じらうように色を変える酔芙蓉の花を摘んできては毎日飽きずに見ている。

2020年09月24日 マイナス言葉・プラス言葉

 職場で何気なく使う言葉の中にマイナス言葉があることに気づいた。マイナス言葉とは否定的でやる気を感じさせない言葉という意味である。例えば、リスクがあるのでしません、それは受け身の案件です、しても無駄です、難しいですなどなど。一方、積極的な言葉、即ちプラス言葉に出会うこともある。例えば、リスクテークあってこそリターンがある、営業は客から断られてから始まる、元気とは造化・創造する天の力をエネルギーにすること(陽明学者の安岡正篤)などなど。

 とりわけ安岡正篤氏の語る元気の話は面白い。どんなに賢くても、金持ちでも、権力があっても病気で元気がなければしょうがないという例示は説得力がある。コロナ鬱が指摘される今日、心身ともに元気でいることがいかに大切か身にしみて分かるのである。

 ということで、職場ではマイナス言葉を使わないように指導している。言葉は言霊(ことだま)である。言葉には魂が宿っている。漢字学者の白川静先生ならば、漢字には歴史・文化・民族が宿っていると言われるかもしれない。とにかくマイナス言葉は使っている内に元気を失い、プラス言葉は使っている内に元気が出てくると思う。元気で積極的な社風にするためには、私もサントリーの佐治元社長のように「やってみなはれ」と言ってみたい。

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