芭蕉林通信(ブログ)

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2021年01月27日 家の椅子

 あるカフェの本棚に「父の椅子 男の椅子」という本を見つけた。亡くなった父親が生涯をかけて集めた椅子の数々を、その長女が父親の思い出とともに語る本である。世間によく知られた椅子や面白いデザインの椅子を眺めながら、ふと我が家にはどんな椅子があるのだろうかという疑問が湧いた。

 さっそく我が家に帰り椅子を数えて驚いたのは、ソファを別にして16脚と多くの椅子があったことである。因みに我が家は二人所帯。近くに子供一家が住んでおり総勢集まると9人というのが最大数である。16脚とは9人に対しても余りが出る数である。もちろん椅子にはそれぞれの使用目的があるので、ある場所ある部屋が違う。

 16脚の椅子を分類すれば以下のごとくなる。玄関を飾る椅子1脚、食堂の椅子5脚、リビングルームのマイ・チェア1脚、書斎に3脚、洗面所に1脚、庭用に4脚、持ち運び用に1脚。その中で気に入っているのはやはり自分専用の椅子。写真の椅子はリビングルームに置いているマイ・チェアで、3年前に布製カバーが破れたので必死になって業者を見つけブラウン色の革で修理してもらったもの。もう一つは書斎の古い木製スツール。昔の小学校で使われていたものか補修跡や多くの傷が良い味になっており、座ってもいいしちょっとした物を載せるのに便利でもある。これからも愛着のある椅子に座りながら静かな時間を過ごしたいと思っている。(参考文献 「父の椅子 男の椅子」宮脇彩著)

2021年01月21日 月がきれいだな

 清少納言の枕草子風に言うと、「いとおかしきもの 日経新聞文化欄」である。日経新聞の最も好きなページは文化欄だが、連載中の小説が伊集院静氏の「ミチクサ先生」、私の履歴書が美術史家・辻惟雄氏であり、今はダブルで楽しめる(それに加えて、美の十選の切り抜きは相変わらず続けているからトリプルかも)。ミチクサ先生とは夏目漱石のことであり、五高に英語教師として赴任した漱石が熊本で鏡子夫人と新婚生活を送る日々が描かれ、郷土愛がくすぐられっぱなしである。

 紹介されている一つのエピソードが漱石の超訳である。五高の生徒が「I love you 」は汝を愛していると訳して良いかと質問した。漱石の答えは「月がきれいだな」が良いと。日本人は愛してるなどと言わないし、第一向いていないと言う。小説に出てくる小天(おあま)温泉もよく知った所であり、そこを舞台とした「草枕」は漱石の芸術論が披瀝されていることで知られている。これからは漱石の第一子誕生の場面が描かれるはずである。漱石は生涯多くの俳句を作りその半数は熊本時代に作られたと言われており、「安々と海鼠の如き子を生めり」という句が果たして小説に出てくるかどうかなど興味が尽きない。

 一方、辻惟雄氏が名著「奇想の系譜」で世に問うた江戸絵画、とりわけ岩佐又兵衛、伊藤若冲、曾我蕭白、長沢蘆雪らの作品に辻氏がいかにして出会い、それらをどう評価していったのか知りたくてうずうずしている。未だ知られていない優れた作品や作家を人よりもいち早く発見して正しい評価をするというのは、冒険そのもののようでドキドキワクワクする。しかもおまけまで付いていることに気づいた。漱石が小天温泉の床の間に掛けてある伊藤若冲の鶴の絵を見ていたく感心する場面がある。つまり、「ミチクサ先生」と「私の履歴書」がここにつながったのである。

2021年01月18日 首相、順番が間違っていますよ。

 菅総理大臣の就任挨拶があった際、きわめてわかりやすいフレーズで政治哲学が披露された。それは、「自助、共助、公助」で国民生活を豊かにしたいというものであった。まずは、国民一人一人が自己努力する、その次は皆で協力して頑張る、そしてなお不可能であれば政府が手を差し伸べるというのが発言の趣旨であったと思う。

 首相の考え方の背景にあるのは「新自由主義」という考えである。首相誕生の経緯を遡ってみると、小泉首相が安倍さんを後継指名し、安倍さんが菅さんを後継指名して今日がある。そして小泉首相が経済政策面で登用したのが経済学者の竹中平蔵氏であり、彼は市場経済原理主義者ではなかったかと私は思っている。同じ大学の同級生である竹中氏が、政治の中枢で郵政民営化を主導したことを自慢に思っていたが、その流れが今もって変わっていないというのが現実だろう。(面白い事実は、竹中総務大臣の時の副大臣が菅現総理。前から強い絆がある。)

 新自由主義の考え方は、小さな政府の元で民間部門にできるだけ任せた方が、競争原理が働き効率が追求され生産性が上がり経済が発展する、そのことにより全体が豊かになれば皆がハッピーだというユートピア的思想である。しかし現実の世界はグローバル化のひずみの中、フェイクニュースが飛び交い、地球温暖化や格差の拡大など負の面が続出している。ノーベル経済学賞を授賞したコロンビア大学のステグリッツ教授は、「市場の失敗が民主主義を傷つけている」と喝破した。トランプ大統領が分断を煽り、民主主義を危機的にしているのがアメリカの現状だ。 そこで日本の首相に申し上げたいのは、「公助、共助、自助」に順番を変えない限り弱者は救われないだろうと言うことである。コロナ感染対策もしかり、自粛要請だけでは問題が解決しないことは自明であり、強いリーダーシップが必要なこともこれまた自明のことなのである。 (参考文献)@ 竹中平蔵 市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像  A欲望の資本主義4 ステグリッツ×ファーガソン 不確実性への挑戦  B100分で名著 資本論

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