芭蕉林通信(ブログ)

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2016年08月16日 復元模型

 明治19年に製作された「熊本県商工技芸早見便覧」という小雑誌には、当時の商家120数軒の銅版画が掲載されている。その内の一つが我が社の前身である乾物問屋「かめや」である。今年創業148年を迎える弊社にとっては貴重な歴史的資料であり、明治中頃に印刷され配布されたと思われる「かめや」の引き札と共に大事に保管している。

 先般、市内某所で模型作家の展覧会を偶然見たが、その時に思いついたのが版画の立体模型化である。7年前に山鹿灯籠の制作者にくだんの版画を持参し模型化を依頼したが、今日まで具体化しないままで来た。そこで今度こそ千載一遇のチャンスとばかりに模型製作を依頼したのである。模型作家とは大学教授の奥様だが、これまで東京駅など大作をものにしている人で、設計図を詳細に分析した上で製作するというのだから念が入っている。

 ところが弊社の場合は設計図などあろうはずもなく、頼りは一枚の銅版画のみである。従って、必然的に想像復元となるのだが、内部の梁の具合だの構造計算上の問題など解決すべき点が数多い。そこで市内に残っている当時の建造物を探しては持ち主に頼んで内部を見せてもらうなど手間のかかる仕事と相成った。  しかし苦労の甲斐があり、約4ヶ月の作業期間を経てようやく完成し納品されたのである。これを私がスケッチしたものの到底細部にまでこだわった作品の良さを紹介することはできない。今は、先祖の座ったであろう帳場などを眺めては創業者の苦労を偲んでいる。

2016年08月09日 幼児の天才

 ピカソのキュービズム時代の絵は、一見すると自由奔放、大胆なデフォルメ、常識に捕われない視点、丸や三角など幾何学文様などが見て取られ、まるで純粋無垢な幼児が描いたかのようだ。ピカソ好きの私は海外に行った時は、何をさておいてもピカソ作品を見ることを優先させてきた。彼は長生きをした上に生涯に亘って絵や陶芸、彫刻に挑戦し続けたので多作の画家と言え、そのために世界中で彼の作品が収蔵されている。  実見して今なお記憶に残る作品は、パリのピカソ美術館にある青の時代や赤の時代の初期の作品群であり、さらにはスペインのソフィア王妃芸術センターの「ゲルニカ」、ニューヨーク近代美術館の「アビニヨンの娘たち」などだ。  日本における素朴な絵としては、安西水丸さんのイラストに関心を持っている。作家の村上春樹さんの本を数多く装丁したことでも有名なイラストレーターだ。素人が自由闊達に描くフォークアートにも興味があり、アメリカに行った時はインディアンやイヌイットが作った物を少し買い集めたりもした。

 幼い子供の絵を見るのも好きである。無邪気でさしたる技術もないままに、はっと驚く絵を描くことがあるからである。天才的なひらめきを感じることもある(少し大げさだが)。ここに掲載した絵は5才の子供の絵だが、テレビのニュース番組を見た後、北朝鮮の兵士が行進している絵を描いたと言ったのには驚いた。単純な線が躍動している兵士の姿をきちんと捉えている。人間の才能は間違いなく、この幼児時代に飛躍を遂げると言ったのは数学者の岡潔さんだ。ということで、一瞬の天才のひらめきが垣間見える幼児の作品を手元に残しては、仕事の合間にしばしば見惚れているのである。


2016年08月01日 人生は80才から。

 先月市内のホテルで「ガンバレ熊本。人生は80才から。」というパーティが約200人を集めて開催された。主催したのは一昨年傘寿の会を開いて地元の80歳を80人以上集めた人だから、その企画力と実行力には改めて脱帽した。しかも目玉として80年前に生産されたワイン、つまり1936年ものワインを10本提供すると言う。食い意地の張った私はそのワインを急に飲みたくなって参加したのである。彼の日頃から口癖は「これからの人生は思い出づくり」である。最愛の奥様を失くしているにも関わらず、元気で前向きな姿勢にはいつも圧倒され、真似をしたいものだといつも思っている。

 ところでつい最近日本人の平均寿命が発表されたが、男性はまさにほぼ80歳である。80歳を人生の到達点とするのではなく、人生のスタート地点とする着眼点は実に素晴らしい。そういえば一昨年の傘寿の会では、80歳参加者を代表して、ある医師が「皆さん、傘寿の次は米寿、その次は白寿、その次は大還暦です。大還暦とは還暦の2倍、つまり120歳。大還暦までは後40年間もありますから、大いに人生を楽しみましょう。」と挨拶されたのには度肝を抜かれた。

 人生は山あり谷ありとはよく言う台詞だが、逆境を乗り切る一つの手段がプラス発想である。ポジティブ思考といってもよく、経営者はネアカでなければならない。年齢にしてもポジティブ思考で捉えるのが良いのであろう。  それにしてもお年寄りは元気、若者はおとなしいというのは困ったものである。そして、肝心の1936年産のワインは甘く美味しく熟成した味がした。味覚の思い出が一つできた。

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