2016年08月30日 物に執する
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あれは、かつて勤めていた銀行の調査部時代のこと、自身初めての海外出張をした時のことである。調査テーマは「アメリカにおける日本企業の不動産投資」であり、西海岸は大手会社の幹部と同行、東海岸は単身出張となった。ロサンゼルスからニューヨーク行きの飛行機の中で機内誌を読んでいると、首都ワシントンにあるオルゴール店の記事が目に入ってきた。ニューヨークの次は、ワシントンの日本大使館を訪問する計画だったので、そのオルゴール店に行こうと決心した。 こうした経緯がある品物だから、たとえ壊れて動かなくても曲が流れなくても私にとっては大切な宝物なのである。身近な物をスケッチするという行為は過ぎ去った過去の記憶を取り戻す行為と相似している。 |
2016年08月24日 俵万智さんに会う
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失礼ながら俵万智さんは1962年生まれだから私より一回り若い寅年生まれ。今となっては若手歌人の雰囲気はなくなっているのではないかと懸念したが、あにはからんや、未だ童顔で若々しいのに驚いた。そして、句会の恒例に従って、自らの句を披露してくれたし、選句に加わってくれたのである。 興味津々の私は、句会終了後に質問した。「歌人では誰が好きですか?」という問いには、「和泉式部、恩師の佐々木幸綱、寺山修司」との答え。なるほど恋の歌が得意な俵万智さんらしいと感心した。
ところで、「サラダ記念日」の中で私が好きな歌と言えば、どうやら会話型に偏っている。 |
2016年08月16日 復元模型
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先般、市内某所で模型作家の展覧会を偶然見たが、その時に思いついたのが版画の立体模型化である。7年前に山鹿灯籠の制作者にくだんの版画を持参し模型化を依頼したが、今日まで具体化しないままで来た。そこで今度こそ千載一遇のチャンスとばかりに模型製作を依頼したのである。模型作家とは大学教授の奥様だが、これまで東京駅など大作をものにしている人で、設計図を詳細に分析した上で製作するというのだから念が入っている。 ところが弊社の場合は設計図などあろうはずもなく、頼りは一枚の銅版画のみである。従って、必然的に想像復元となるのだが、内部の梁の具合だの構造計算上の問題など解決すべき点が数多い。そこで市内に残っている当時の建造物を探しては持ち主に頼んで内部を見せてもらうなど手間のかかる仕事と相成った。 しかし苦労の甲斐があり、約4ヶ月の作業期間を経てようやく完成し納品されたのである。これを私がスケッチしたものの到底細部にまでこだわった作品の良さを紹介することはできない。今は、先祖の座ったであろう帳場などを眺めては創業者の苦労を偲んでいる。 |