2018年03月05日 書を見つけCDを聞く
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3年前のある茶会で博多から参加した青年美術商に出会った。話を聞くと自分の店を出したばかりで松田正平の作品がある言う。出張のついでに、彼の小ぶりな店に出向き松田正平のデッサンと書を見せてもらった。その書は「君不聞胡笳声最悲」(君聞かずや、コカの声の最も悲しいのを)である。これは漢詩の一節をとったものであり、異国の笳(カ:あしぶえ)の音の物悲しさは比類がなく聞かないでおれないとでもいう意味であろう。その書を譲ってもらい、実際に胡笳(コカ)のCDを見つけてその音色を聞いたみた。途端に唐時代の瀟湘(しょうしょう)とした音色が頭の中に広がっていったのである。 #漢詩とは、「君不聞胡笳声最悲 紫鬚緑眼胡人吹」 |
2018年02月26日 書を愛でる
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大家とは絵のみではなく書もまた一流と知ったのは堅山南風の絵に署名を見つけた時である。達筆かつ個性的な署名が絵に映えて美しい。外国人が漢字を学ぶ際に、書を文字としてではなく絵またはデザインとして捉えるという感覚と同じものがあるのかも知れない。 ここに掲げた色紙には、青墨かつ薄墨で茄子の絵が描かれ「淡味是眞」の賛がつけられている。「あわきあじこれしん」と読める字は、行書から草書に変化してまさに味のある賛となっている。私には淡い味とは単に食べ物のことではなく、93歳まで生きた堅山南風の生き方そのものに聞こえてくるのである。この一ヶ月ほど見飽きずに毎日眺めているのはそのせいであろう。 |
2018年02月19日 94歳の現役
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これまでも大阪の先生から時々電話が架かってきて、「今年いくつになった?」と尋ねられることがある。「先生、今年で・・歳になります。」と答えると決まって「まだ、若いなあ。」と言われはっとする。そうだ、まだ老けるには早いのだと気付かされるのである。 インド独立の父であるガンジーに「永遠に生きるがごとく学び、明日死ぬかのように生きる。」という言葉がある。まさにS先生の生き様と同じだと感じた。さらに新幹線でとんぼ返りされる先生を車で送る途中、「食事はきらいな人間としてはならない。」と教えてもらった。消化に悪いのだそうである。最後に申し付け加えておくが、S先生にはちゃんと謝礼をお渡ししている。 |