芭蕉林通信(ブログ)

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2017年06月05日 眼横鼻直(がんのうびちょく)

 今国会で安倍首相の行政介入について激しい野党の追及がなされているが、一躍脚光を浴びた言葉が「忖度」と「事実無根」である。忖度(そんたく)という漢字は今まで知らなかったほどだから、漢字の勉強にはなった。国会では忖度は悪い意味で取り上げられているが、一般社会において忖度するのは日本的特徴であろう。会社では、周りの人間をもっと忖度して仕事をしてもらいたいと思うぐらいである。

 事実無根とのやりとりは、獣医学部新設の認可問題で、政権と元官僚の間で惹起した。首相の天の声があったかどうかが争点である。個人的な非難合戦になって泥試合の状態だが、国際情勢が不穏なだけに、つまらぬ問題はいい加減に収束してもらいたいものだ。

 中国に留学して禅を学んだ道元は、日本に帰国するにあたって、中国で学んだことはつまるところ「眼横鼻直」であると言ったそうだ。熊本の産んだ禅僧・沢木興道さんの本にそう書いてあった。眼は横についており、鼻はタテに長いとは明らかなことである。その明らかなことが、欲に目が眩んだ凡人にはわからないということかと思う。あるがままをあるがままに受け止める。そこには事実無根というものは、ないと思うのだが。

2017年05月29日 太郎とひろし

 これまたNHKの日本人の名前を辿る番組で仕入れたネタである。それは日本人の名に多い「太郎」に焦点を当てた番組であり、私の名前に「太郎」が入っているだけに見逃す訳にはいかなかった。「太郎」は古代中国に起源があり、歴史書に「大郎」という記述が残っている。それが日本に伝わり「太郎」として広まった由。浦島太郎、桃太郎、金太郎、ものぐさ太郎、寝太郎など多くの物語に「太郎」が登場しているが、かかとから生まれた「かかと太郎」の物語まであるのには感心した。

 一方、飲食レストランでは「太郎が出た」と言ったりするらしい。一瞬、酔っぱらいのことかと想像したら、実はゴキブリの隠語であった。お客様の手前、ゴキブリとは言い難く、ゴキブリを「太郎」と呼ぶのである。かつて、レストランを7軒経営していたことがあったが、浅学非才の身であっては「太郎」という隠語はまったく知らなかった。

 つい最近も、レストラン経営者から「ひろし」は知っているかと問われた。当然にして答えられなかった。正解は、これまたゴキブリ。歌手の五木ひろしの五木は音読みでゴキ。そこで、「ひろし」がゴキブリの隠語になったらしい。改めて、日本語は奥が深いと思った次第。

2017年05月22日 ゆっくりした生活

 かつてインドネシアのバリ島に行った時のことである。限られた旅行日程に追われるあまり、現地ガイドさんの説明を遮ぎるように、次の観光地に行こうとつい言ってしまった。その時ガイドさんが言ったのが「プランプラン」、つまり現地語で「ゆっくりゆっくり」であった。あるいは、スペインのバルセロナにあるサクラダファミリア教会に行った時に仕入れた逸話である。建築家ガウディの遺志を継ぎ信者の寄付に頼って工事をしているので、教会の完成までには百年以上かかると言われていた頃のことである。日本人のゼネコン関係者が現地に来て、建築期間の長きに呆れ、我々に任せるならば数年で作り上げると言ったとか。

 現代社会は競争を意識するばかりに、効率を重視し何事にもスピードが要求されるようになった。その結果、我々は四六時中時間に追われている。有名な小説「モモ」の言葉を借りれば、時間泥棒に時間を盗まれていつも忙しいのが現代人なのである。心とか愛着とか祈りといったものがどこかに忘れ去られている。

 現在私は足を怪我したために松葉杖の生活を強いられ、否応なく毎日ゆっくりゆっくり歩いている。せわしかった生活からゆっくりした生活に移った時、何か新しい感覚や考えが生まれるのではないかと期待したが、今のところ何も生まれてこない。自らの意思で選んだものではなく、強制的に強いられたものであり、かつまた傷の痛みに心を奪われているからに違いない。それならばせめても、ゆっくり歩き、ゆっくり考え、ゆっくり本を読み、ゆっくり人と語ってみたいと思っている。

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