芭蕉林通信(ブログ)

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2015年04月28日 図書室を作ったものの・・・

 京都に俵屋という老舗旅館があります。最近出版された「俵屋相伝」という本には、季節ごとに活ける花々や京都ならではの調度品が日本の和の極地とでも言える美しさで紹介されています。
 随分昔に一度泊まったことがありますが、その時の印象は一歩宿に入ると突然時間がゆっくりと進み始めるというものでした。また、旅館の一角には小さな図書室が設けてあり、しかも潜り戸のごとく背を低くして入る入り口が作ってあり、その仕掛けが小憎らしいほどです。蔵書は主にアート関係が多かったのですが、それは旅館のオーナーが写真家のアーネスト・佐藤の奥様・佐藤年さんであることに関係があると思いました。

 とまれ、それ以来自分で何とか図書室を作りたいと夢を温めて来たのですが、やっと昨年末会社の一角に図書室を作り長年の夢が実現したという訳です。我が図書館の蔵書は、主に私が衝動買いしたもので自宅保管することが困難になった大判の美術書や読みあぐねている話題書等です。もっとも、このスペースを利用するのは、時々実施する本社の女性スタッフとの食事会ぐらいであり、なかなか蔵書が社員の関心を得るにはまだ時間がかかりそうです。
 私にしても他人の選んだ本は素直に読めませんから、図書室の利用率が低いのは仕方がないと言ったところでしょうか。


2015年04月24日 集字に挑戦

 書の勉強をしていた時に、集字というものがあることを知りました。古今の名筆から好きな字を選び組み合わせて、題や文章を作るというものです。今までは、何となく面倒で集字を実行するまでには至らなかったのですが、今回だけは仕事上の必要に迫られて挑戦してみました。
 やってみれば意外と簡単です。まず対象になる書から、好きな字をスマホで撮影。それを写真編集機能を使って、字を切り取りしズームで拡大して調整すれば終わりです。
 今回は、江戸時代の禅僧仙厓さんの書から3文字を集字しましたが、一字一字にして見ると、仙厓さんの書の素晴らしさが一段と分かる気がしました。仙厓さんの短い漢詩の中には、例えば「無」という漢字が3カ所使われているのですが、全てが違った表現で書かれています。

 ここに紹介するのは、その中の「無」の一字ですが、よどみない筆の動きが縦横無尽に動き、そして最後には静かな佇まいを見せていることに感心します。他の「無」の字は、まったく違う躍動感に満ちた書体で、これまた魅力あるものです。
 何気なく眺めていた書には、こうした字の隠れた魅力があることを発見するいい機会となりました。


2015年04月14日 「そうだったかのう」

 朝の食事時に、子供の「はいっ」という返事はいいねと話していましたら、家人が面白い話を披露してくれました。それは江戸時代の禅僧白隠さんの逸話です。
 信心深い父親が娘を連れて白隠さんのお寺に行く内に、娘が悪阻(つわり)となったために、父親は白隠さんを疑い、白隠さんに娘に悪いことをしただろうと詰め寄ったのだそうです。その時の白隠さんの返事が「そうだったかのう」。
 父親は赤ちゃんが生まれると白隠さんにその子を預けたので、それから白隠さんの子育てが始まりました。赤ちゃんに米汁を飲ませ、托鉢には赤ちゃんを連れて行きました。そうした白隠さんを見ていて、母親はたまらず父親に真実を話したそうです。父親が白隠さんに平謝りしたのは当然のことです。
 
 家人は、白隠さんの「そうだったかのう」という答えが素晴らしいと言うのです。私もその話を聞いていて、相手を非難するでもなく肯定するでもなく、そのまま受け入れる態度が素晴らしい、誰にでもできることではないと感心しました。

 先日は現代の世界で大変に影響力のあるというベトナム人の禅僧ティック・ナット・ハンのテレビ番組を見ました。特にインター・ビーイング(相互依存制)という師の教えに感銘を受けました。今週号の日経ビジネスに掲載されていた松下幸之助さんの言葉「相手が生きれば自己も生きる」に相通じるなと思いました。人生を極めた人の言葉は、同じものに収斂されていくものなのだと感じた次第です。


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