2016年04月25日 大地震発生から10日間
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今回の地震で一番被害が大きかったのは益城町と南阿蘇村ですが、実は熊本市の西部に位置する熊本駅近辺でも古い家屋が全壊したり立ち入り禁止の赤い札が貼られたりしている家が数多くあります。城下町の一画でもあるこの地域にはお寺が集中しており、歴史あるお寺は建物が古いだけに被害は甚大です。この写真は熊本駅から歩いて15分ほどのお寺の楼門ですが、崩れた楼門に挟まった車を見ると車に乗っていた人に怪我はなかったかと心配になります。 周りの人と会話をしますと、身近な所でこれだけの被害が出ているにも関わらず、なぜか現実感がなく、夢を見ている気分だと異口同音に話します。私自身がその一人ですが、今回の地震が想定外であったのは当然としても、その規模と範囲の大きさに身体感覚が付いていってないのが原因です。このところ、過去に起こった阪神・淡路大震災や東日本大震災をしょっちゅう思い出します。過去を教訓にしたいとは思うのですが、当事者に体験を聞かない限り想像するだけでは限界があると分かりました。 街を車で走行しますと、今日だけでも他県から災害普及の応援として駆けつけてくれた自衛隊、警察、ガス会社、水道局の車列とたびたびすれ違いました。県民でさへ毎晩自宅に寝る事ができない人が6万人を越えているというのに、こうして支援に入って来てくれた人たちはどこで寝て、どういう食事をしているのだろうかと心配になりました。そして、自然に頭が下がる思いがしました。 |
2016年04月19日 城が崩れた日
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しかし他の現実に目を向けると、熊本には今なお避難所で車の中で余震に怯えて暮らす人たちが数万人います。皆さんが一日でも早く元の生活に戻ることを夢見ています。
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2016年04月11日 出汁(だし)の秘密
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フランス料理のスープは一昼夜かかって作られるのに対して、和食の出汁は約20分で作る事ができるから随分と便利です。しかし、出汁を作る材料である昆布やカツオを作るのには大変な時間と労力がかけられていることに注目しなければなりません。かつて北海道の根室で昆布漁師の作業場を見ましたが、やっと凪いだ海に船を出して取ってきた昆布を一家総出で干場に一本一本丁寧に並べて干していました。鰹節の産地の一つは鹿児島県の枕崎ですが、カツオを整形し焼きまた薫製にするまでの手間は大変です。つまり、出汁取りの20分は物によっては数年にも及ぶ材料作りがあってからこそ可能なのです。 そこでふと思い出したのは、民芸運動の中心人物で陶芸家だった浜田庄司さんのエピソードです。詳細は少し不確かですが概略以下のような会話があったようです。浜田さんが作品に釉薬を掛け流ししているのを見た客が、「先生がわずか20秒で作った作品が何十万円で売れるとは羨ましい限りです。」と言ったそうです。浜田さんは、「いやこれまでの修練に50年間かかっているから、いわば50年と20秒だよ。」と答えたのです。私は本当に素晴らしいやり取りだと思いました。 何事にも表面的には捉えることのできない、深い背景があることに気づかされます。出汁を作ること、一つの陶芸作品を作ること、これらのことを考える時、自分自身を省みるきっかけになれば良いと思いました。 |