2015年06月15日 趣味を深く語る
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時々、気の置けない経営者仲間が集まり、共通のテーマで話し合う私的な会があります。かれこれ20年続いているのですから、メンバー同士よほど馬が合っていると言えましょう。
当初は、リストラ研究会と称していましたから、各企業の経営改革が主たるテーマでした。しかし、最近ではテーマが尽きたということに加え、我々も高齢化したことから、健康とか後継者作りとか年相応のテーマに変わってきています。そして今月のテーマが「趣味を深く語る」と言う訳です。
趣味と言えば、忘れ難い話を二つ思い出します。その一つは、随筆「パイプのけむり」シリーズで著名な團伊玖磨さんの話です。大学に入るために上京し下宿生活をしている時に、團さんの「パイプのけむり」の中に趣味について書いてあるのを見つけました。
要旨はこうです。趣味とは好きな事をすることなので、時間がかかればかかるほど良い。私はコーヒーを飲む事が趣味なので、自分自身のコーヒーを作ることとした。それで、八丈島に土地をもとめコーヒーの木を栽培した。コーヒーの豆を採集し、焙煎し、自分のコーヒーを楽しむことができた、というものです。
その頃はまだ純粋だった私は、突然趣味に目覚め、自分も自分だけのコーヒーを作ろうと思い立ったのです。とはいえ、実家からの仕送りを受ける身、なけなしの金からかろうじてコーヒーの豆とミルとサイフォン式の湯沸かし器を購入しました。そして、下宿の部屋で悪戦苦闘の末に、一杯のコーヒーを作り出すのに約1時間、飲んで30秒。以来、あまりのばかばかしさにコーヒー作りの趣味は瞬く間に終了したのです。
もう一つの趣味の話というのは、大きな会社で新社長が誕生すると、よく雑誌などに掲載される社長紹介欄でのことです。大体は趣味が聞かれており、人によっては自分の趣味は仕事だと答えていることがあります。私が若い頃は、仕事を趣味にするとは何と幅の狭い人間だと批判的に思っていたものです。しかし、長年社会人としての経験を積んできますと、仕事が趣味と言えるのは最高ではないかと考えが変わってきました。
なぜならば、朝起きて、今日も趣味の仕事ができるぞ楽しいぞ、と思えたならば最高です。朝起きて、わあ今日もいやな仕事に行かなければならない、と思うのとは雲泥の差です。
さて、私の場合は、上記のどれにも該当しないようです。私の浅く広い趣味は、日替わりメニューのようで、実に落ち着きのない日々を送っているのです。ですから、私には「趣味を深く語る」ことは全くできなかったのです。
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2015年06月09日 牛深よいとこ
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熊本市内から車で行って一番遠い所と言えば、厳密ではありませんが、それは天草諸島の最南端にある牛深ではないかと思います。3年前に二拍子の威勢の良い踊りで有名な「牛深ハイヤ」を見に行った時には、長時間の車での移動を避けて、新幹線で出水駅まで行き、その後バスで長島に移動し、蔵之元港から船に乗り牛深港に上陸しました。
従って、今回の牛深行きは久しぶりのことでしたが、前回の観光とは違い、水産加工品の発掘を目的とするものでした。私どもの会社と昔からの取引のある企業が多い地域なのです。天草を訪問したことにより、各地各社に立派な跡継ぎがいることが分かり、天草の将来を頼もしく感じたりもしました。
因に、天草にはどういった水産加工品があるかと言いますと、若布等の海藻類やかまぼこ、魚の干物などが主なものです。ただ、今回知識を新たにしたのは、牛深は雑節製造では日本一の地であるということです。雑節とは、かつお以外の魚、例えばイワシ、サバ、アジなどを原料とするもので、節は鰹節が4、雑節が6の割合で、さらに雑節の7割を「牛深節」が占めているのだそうです。
雑節から和食に必要な「だし」が抽出されるのですから、今回世界遺産に登録された和食文化を陰で支えている存在なのです。現在では、牛深の23社が年間58億円もの雑節を製造販売しているのですから、天草の一大産業と言っていいのではないかと驚いた次第です。
牛深では、仕事以外でも人情の機微といったものに接する事ができました。天草は江戸時代は天領であり、また近代になっても昭和40年までは天草五橋はなく、天草モンロー主義と呼ばれるほど経済的にも人的にも閉鎖的であったと言われています。だからこそ、天草の人は未だ純朴で親切なのだろうとしみじみと感じました。
牛深に是非一度足を運んでください。牛深はよいとこです。
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2015年05月28日 ほめ上手な和尚さん
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京都の大徳寺の塔頭の一つに行った時のことです。桃山時代に作られた枯山水の庭が見事なお寺でしたが、前住職だったというニコニコ顔の和尚さんが我々を迎えてくれました。
その和尚さんが見事なぐらいにほめ上手なので、感心しつつもいささか閉口しました。例えば、熊本にもこんな格好の良い男がいるんだねとか、奥さんは美人でスカーフが実に良く似合っている、このタクシーの運転手さんは京都一だよ、などなど一般的に言えば歯が浮くような話ばかりです。
とは言いながら、自分自身を省みることにもなったのです。つまり私の場合は、部下をほめるよりは、部下を叱咤激励したり、あら探しをすることが多かったのではないかと。ほめ上手というのは、真似しようにも簡単に真似できないのです。持って生まれた性格としか思えないのですが、少し自分が情けなくなりました。
その和尚さんが書いた色紙が売店で売ってありましたが、最初は何と書いてあるのか分かりませんでした。それがこの写真にある言葉です。和尚さんに読み方を教わったものの、これならば自分でも書けると思い、色紙を購入せず熊本に帰ってから書いてみたのがこれです。
種を明かせば、「気は長く、心は丸く、腹立てず、口慎めば、命長し」となります。クイズ形式で社員や友人に披露しますと、結構面白がってもらえました。私にとって、お金のかからない貴重な京都土産となりました。 |