芭蕉林通信(ブログ)

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2015年09月01日 牙を磨く

 夏休みは毎年、人吉市の先にある球磨郡水上村で農家民泊をすることにしています。都会の喧噪を逃れ、山の懐に抱かれたような自然環境は、心と体を浄化してくれます。ただ今年は激しい雨に見舞われたこともあり、屋根を激しく打つ雨の音、農家の前を流れる濁流、朝5時の雄鶏の刻の声に眠りを妨げられ、檻のイノシシの強烈な悪臭には肝をつぶしました。まさに、五感が新しい刺激に悲鳴を上げていました。
 さて、今年の発見はイノシシの牙です。毎年お世話になる農家のご主人がお土産にくれたものです。初めて見る牙は、湾曲し尖っており、人間がイノシシに襲われたならば大ケガをするという意味が一目でよく分かりました。しかも、ご主人が教えてくれたことには、イノシシは上下の牙を擦り合わせながら自ら牙を磨いていると言うのです。確かめてみると、確かに上下の牙には擦り合わせた後がナイフのようなエッジとなって残っています。牙は敵の肉に食い込み引き裂く役割を果たすようです。
 常套句の一つに牙を磨く、というのがありますが、まさにイノシシこさが言葉そのものだと思い知りました。イノシシは遠く犬の声を聞くと、犬が近づくまで牙を磨き、摩擦熱まで持った牙で戦うというのですから、野生の動物の恐ろしさを知りました。

 翻って社内の人間を見渡せば、牙を磨いているような野性味満点の幹部社員は見当たらず、甘噛みを繰り返している有様です。少し厳しく部下を指導すれば、世間で言うところのパワハラになるという時代ですが、せめて私だけでも牙を磨き、狼王ロボのように遠吠えをしたいと思っています。


2015年08月26日 白洲正子さんの松上げ

 今年の盆休みは、長年の夢を叶える旅となりました。それは、京都北の山中にある八枡の火祭り「花背の松上げ」を見学できたからです。
 この松上げを広く世に知らしめたのは、白洲正子さんの本「隠れ里」です。その神秘的で勇壮な火祭りを見たくて、花背の宿「美山荘」に予約をしたものの、僅かな部屋しかないので5年先まで予約で一杯。ところが、春に京都に行った際、美山荘で中食を味わっていると、とても上品な女将さんが無理をすれば一部屋用意できますと話をしてくれたのでした。元気な内に松上げを見る事はできるのかなと不安に思っていただけに、女将さんの話は奇跡に思えました。
 

 8月14日がその日ですが、万が一雨であれば松上げは中止になりますから、約一週間前から天気予報とにらめっこです。そして、当日は天気に恵まれ、見事な松上げを見る事ができたのです。因みに、松上げとは松明を放り投げて20mの高さにある大松明に火を付けることです。松とは松明の松のことなのです。
 会場の広河原には辺り一面松明が点され、男衆総勢50名ぐらいがやおら火の付いた松明を藁紐の遠心力を利用して放り投げるのですが、ハラハラドキドキの連続です。やがて一つの松明が20m先の松明に乗り、さらに別の松明が続くと暗がりにある大松明は夜空に大きな火炎を立ち上らせるのでした。
 思えば、地元でも阿蘇神社に古式豊かな火祭りがあり、早乙女の行列があります。来年は、阿蘇の幻想的でロマンに満ちたこれらの祭りを見て、京都との歴史的なつながりなどに想いを馳せたいを思っています。
 
 


2015年08月13日 個人的な戦後70年展

 本年は戦後70年の節目の年とあって、特別な感情がわき起こると同時に、政府では多くの行事が組まれているようです。とりわけ世界が注目していると言われる安倍首相の戦後70年の談話は、明日14日に発表されますから近隣諸国の反応が気になるところです。
 「失敗の本質」という本は今なおロングセラーとして読み継がれていますが、この本は第二次大戦で多くの犠牲者を出し、苦戦ないしは完敗したいくつかの戦いを分析した名著の誉れ高い本です。一読して思ったことは、日本人は責任を曖昧にする民族だという点です。今回の東京オリンピックのメインスタジアム建設計画の白紙問題にしても、事件の経緯がつまびらかなになることは決してないように思われます。野党が国会で追求しているように、せいぜいトカゲの尻尾切りで終わりそうなのは残念な限りです。

 さて、私の周りに戦後70年に関連するモノがないかと思った時、亡父が海軍中尉時代に身につけていた「短剣」と海軍航空隊で父が教官として乗っていた「99式艦上爆撃機の模型」、そしてネットオークションで購入した「シンガポール陥落記念の鉛筆画3点」があることに気づきました。そこで、急遽会社の一隅に「戦後70年展」のコーナーを儲け、戦争を知らない我が社の社員に説明しつつ見せています。
 私の社会人のスタートは広島でしたが、ある時訪ねてきた父が、海軍兵学校のあった江田島での同窓会に私を連れ出したことがあります。73期の卒業生は当時50歳ぐらいと思われますが、同期の三人に一人が戦死しているとあって、まず「海行かば」の斉唱があり、校舎内にある運動場で円陣を組んで行進していた姿を今でも思い出します。確か同期で最初に戦死した方は、天皇陛下に卒業報告で謁見した後、配属した艦船で一日目に亡くなられたそうですから、戦争はごくごく近くにあったのでしょう。つらい、怖い話です。
 
 軍刀の錆びて亡父の終戦日 


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