芭蕉林通信(ブログ)

HOME > 芭蕉林通信(ブログ)

481件〜483件 (全 745件)   <前の3件     ・・・   157 | 158 | 159 | 160 | 161 | 162 | 163 | 164 | 165  ・・・   >次の3件

2015年02月23日 漱石と老婆

 地元紙である熊本日々新聞に、今月から夏目漱石の「草枕」が連載されています。冒頭の有名な一節である「山路を登りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」が昔から順番通りにうまく言えませんでした。が、最近やっと、知情意の順番だったのだと分かり、暗唱しやすくなって嬉しく思っています。こんなつまらないことで喜ぶのはおかしいと人様からは言われそうですが、思い出したくても思い出せなくらいいらいらすることはない訳で、こうした経験のある方ならば、納得していただけると思います。 

 ところで、話が随分と脱線しましたが、この「草枕」では、漱石自身と思われる主人公が峠の茶屋に寄って、たまたま応対してくれた老婆を写生しようとする場面があります。漱石は、老婆がすぐに動き出したことで写生を諦めるのですが、写生の対象としての老婆は、人生を生き抜いて来た人物として、漱石は味わい深く感じたのでしょう。
 というのは、最近見つけたバーナードリーチの書画が、まさにその老婦人を写生し、その時の思い出を書き記したものだったからです。リーチは綿を編む老婦人を写生した上で、その時の静謐な雰囲気に感動したと言っているのです。
 民芸運動を主導した柳宗悦との親交も厚かったバーナードリーチは、今まさに、前述した地元紙の連載小説「リーチ先生」(原田マハ著)の主人公でもあるのです。彼の日本の婦人に対する暖かい眼差しを感じるこの書画は、峠の茶屋の老婆を写生しようとした漱石の心に通じるように感じるのは少し考えすぎなのでしょうか。


2015年02月16日 司馬遼太郎記念館の菜の花

 久しぶりに大阪に行った機会に、司馬遼太郎記念館にまで足を運びました。司馬さんの自宅の敷地内に、安藤忠雄さん設計の記念館がありましたが、目を引いたのが庭のあちこちに飾られた菜の花でした。
 菜の花は、司馬さんが一番好きだった花ですし、著書「菜の花の沖」の題名にもなっているぐらいです。その菜の花に飾られた司馬さんの書斎が圧巻でした。

 書斎には、執筆する机を囲むように本棚があり、縁側には柔らかそうな椅子が別に置いてありました。ここから、季節ごとに変わる雑木林の庭を司馬さんは眺めていたのだろうなと思うと、もう既に亡くなられていることが信じられない気がしました。生前の司馬さんはこれといった趣味はなく、ただ様々な本や資料を読む事が大好きだったということですから、庭を眺めながら好きな本を読み、気分転換をされていたのでしょう。

 以前、白洲正子さんの武相荘を訪ねた際、その書斎を見たことがありますが、名著はこうした書斎から生まれるのだと想像すると感慨無量の感があります。次は北九州にある松本清張記念館に行ってみたいと思っています。

2015年01月26日 私のバタフライ・エフェクト

 1963年、アメリカの気象学者が、「バタフライ・エフェクト」という仮説を発表しました。それは蝶が羽を動かすと、空気中の微粒子を動かし、やがては地球の裏側で竜巻を発生させるというものです。学会の参加者は、その仮説のあまりの荒唐無稽ぶりに、本人を馬鹿にしあざけったのだそうです。
 ところが現在では、この「バタフライ効果」が物理学的にも、また多くの社会現象にも適用されるようになっています。ある政治家がテレビ番組で、小さな社会運動が政治を動かすのであり、それが「バタフライ効果」だとコメントしていたことを聞いたこともあります。

 昨年末のことですが、鹿児島大学の学生が卒論の研究のため面会を求めてきました。その卒論のテーマは、鹿児島の食文化で「黒」がキーワードになった経緯を調べるというものでした。そして、学生が行き着いた先が、2003年に私達が仕掛けた「肥後の赤・薩摩の黒」でした。
 当時なぜ、「肥後の赤・薩摩の黒」というプロジェクトを始めたかと言うと、九州新幹線が新八代と鹿児島中央を繋いで部分開業をする際、民間企業としてビジネスチャンスに挑戦するべきではないかという気持ちでした。熊本では昨年から「くまもとの赤」という県庁主導の食文化振興策がスタートしていますし、隣県である鹿児島県でも「黒」が振興のシンボルカラーになって今日を迎えています。
 果たして、私が思いついたプロジェクトが鹿児島大学の学生の調査する、「黒」の原点かどうかは知りませんが、もしそうならば、これこそが「バラフライ効果」そのものではないかと思うのです。私にとっては、10年後に嵐が起こったと思えるのです。


481件〜483件 (全 745件)   <前の3件     ・・・   157 | 158 | 159 | 160 | 161 | 162 | 163 | 164 | 165  ・・・   >次の3件