芭蕉林通信(ブログ)

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2014年08月25日 蝶の羽化と「人」の湯文字

 雨続きの今年の夏ですが、それでも我が家の虫かごにいたサナギ二つは相次いで羽化し、きれいなアゲハチョウになりました。羽化した後に残されたサナギは、鮮やか緑色を失うと共に、軽い小さい物となってコロコロと転がったりしています。羽を広げたアゲハチョウを見ていますと、この小さなサナギの中でどうやって細胞分裂をし、広い羽を折り畳んでいたのか、言いようのない不思議さに心が捕われてしまいました。
 先日のテレビ番組では、宇宙に放出する人工衛星は太陽光発電するために大きな面積の羽を広げなければならない、そのためには羽を小さく折り畳んでロケットに載せねばならないがその知恵を昆虫から得ていると説明があっていました。まさに、アゲハチョウにも該当する自然の知恵だと感心しました。

 ところで週末に山の温泉に入っていた時のことです。湯船から出て体を冷やしていた床に、飛び散った湯でできた模様が目に入ってきました。それは「人」という字に見えるのです。とても立派な字に見えましたが近くにカメラがありません。仕方がないので必死に形を記憶し、再現を試みたのが今日の写真の「人」という字です。本物は適当に飛沫もありもっと心を打つものでしたが、今は蒸発して「もののあはれ」となっていることでしょう。改めて、自然は大芸術家だと思いました。


2014年08月18日 家の近くにあるもの

 今、私は東京を離れ、いわゆる地方都市の旧住宅街に住んでいます。南面が川、北面が高台ですので、陰陽でいうところの「陽」にあたる場所です。台風シーズンになると、風の通り道になりますので結構心配したりしています。ただ旧住宅街のせいか、家の近くには個人食堂や八百屋、公園、小学校、中学校などがあり、さらにその周りには豊かな自然が残っていますので、田舎暮らしを満喫していると言っても過言ではありません。
 とりわけ、特筆すべきなのは、歩いて7分の所にあるS美術館です。ここは、宮本武蔵ゆかりの品々を多く保存している点で著名なのですが、さすがに武家文化の展示品だけに、いつも入場者が多いという訳にはいかないようです。しかしここには立派な庭があり、又しゃれたカフェに加え、催事スペースでは多彩な企画展が年中開催されていますので、私自身は最低でも週一回は足を運ぶことにしています。

 今は、ある昆虫コレクターが収集した昆虫展が開催されています。先日訪問した時には、大勢の子供連れの家族がいたのには驚きました。どうやら子供達にとっては夏休みの宿題を果たす絶好のネタなのでしょう。そういう私も昆虫達の色彩や造形の美しさ、奇妙さに引き込まれてしまいました。日頃から親しくしている館長夫人からは、コスタリカにいる日本人昆虫研究家のブログを教えられていたのですが、先週のTV「世界不思議発見」に当の本人が出演しているのには感激しました。
 夏休みを利用して高松に行っていた孫二人の土産も、カブトムシ、クワガタ、蝶になる前の芋虫などでした。捕まえた蛇を持って帰っていいかという問い合わせが高松からあった時だけは、必死にまた断固として拒絶しました。


2014年08月11日 画家の見た光

 昔、近所にアトリエを構えている画家がおり、ある日訪ねていろいろと話を伺ったことがあります。その画家はパリで絵の勉強をした経験があり、私が訪ねた頃はキュービズム的作品を描いていました。その時に聞いた画家の話はとても印象深く、今でも時々思い出します。
 パリに出たピカソは若い時から評価された画家ですが、彼の周りに集まる人の中には哲学者や物理学者、医者などと今でいう異業種の人が大勢含まれていたそうです。そして、光の速度からして今見ている対象物は0.00000何秒か過去の映像だとか、陰になって見えないと思っている裏側の物は視点をずらせば見えるのだから、それを二次元のキャンパスに四次元として表現するのだどか議論しては、新しい絵画表現を探っていたというのです。
 また、その画家は、カメラで撮ったネガはフランス国内で現像してもらいなさい、日本の現像所は色を出そうとするが、フランスでは質感を出そうとするから、全く別の写真になるよと教えてくれました。その後、海外で撮ってきたフイルムを近所の親しい現像所に持って行き、色を出すのでなく質感を出すように依頼したのですが、その結果、写真に絵画性が出てきたのに驚くと共に大いに気を良くしたという経験がありました。

 ところで、先月末上京した際に、ピカソをして「20世紀最後の巨匠」と言わしめた画家バルテュスの「最後の写真展」を見てきました。晩年になって手が不自由になったバルテュスが、デッサンの代わりにモデルの少女をポラロイドで撮った写真展でした。何気無く入った写真展でしたが、自然光の中の少女が神秘的で純粋無垢な姿に変身しているのに衝撃を受けました。まさに、バルテュスは光を捉えているということが、素人の私にも感覚を通して理解できたのです。写真家の木村伊兵衛が、写真とはつまり光を捉えることだといった言葉がストンと胸に落ちた瞬間でした。


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