2014年10月06日 マッサンの余市
![]() 海外のホテルでは、欧米の観光客がプールサイドの寝椅子に寝転がって、一日中本を読んだり肌を焼いたりするシーンを散見しますが、日本人はそうした滞在型の観光は苦手のようで、いつもコマネズミのように名所旧跡を巡り歩いています。しかし、生まれて初めて行く所は、できるだけ見てやろう味わってやろうという気持ちも尊い訳ですし、何より好奇心と経済効率を考えての結果ですから一概に悪いとは言えないのは確かです。 今回は、お取引先が設営した北海道二泊三日の旅でしたが、過去に10数回は行った所ですから、過去繰り返した点や線の観光を補えたという意味では大変有意義な旅となりました。 札幌は雪祭りと旭山動物園を視察した以来の来訪でした。雪のあるなしでは、札幌はまるで違う街です。そして特筆すべきは、二日目に行った小樽と余市です。小樽も過去に複数回来ていますので、運河のある小さな街はよく歩いた所でもあります。そこで、今まで行く機会がなくどうしても見たかった「石原裕次郎記念館」と「鰊御殿」、「青山別邸」に行く事にしたのです。とりわけ、ニシン漁で得た巨万の富(当時の金で31万円)で建てた「青山別邸」の贅を尽くした邸宅には驚かされました。最高の素材を全国より集めて、手練の職人が技の限りを尽くして造作しているのです。 その後、余市の「ニッカウイスキー工場」に行ったのですが、その日がNHKの朝ドラ「マッサン」の初日という偶然にこれまた感激して見学しました。ここは少し説明が必要ですが、マッサンとは日本にウイスキーの製造技術を招来させた先駆者、竹鶴政孝のことです。赤いとんがり帽子(パゴタ屋根)のような空気抜きを持った建物群が広大な敷地に配置されている様は、日本というよりスコットランドを思い出させるに十分の雰囲気でした。もっとも、ウイスキーの専門書には、スコットランドには明るい色の屋根はないそうですから、これは竹鶴政孝の妻リタさんの好みだったのかも知れません。 これからの朝ドラの展開に目が離せません。 |
2014年10月01日 シンガポール陥落のあれこれ
![]() そうした気持ちでいた時に、古美術商の随筆に目が止まりました。そこには、思い出深い酒杯として、電力の鬼と呼ばれた松永安左衛門氏の遺品処分の話が載っていました。その酒杯は、同氏がシンガポール陥落を記念した茶会で見い出した物と書いてあるのです。数時間を置かずにして体験した、シンガポール陥落の二つの出来事に、偶然とは言え大いに驚かされたました。戦場では画家がスケッチをする一方で、国内では茶会が催されていたというのですから、戦争の矛盾の一端を感じたのです。 そういえば、先日元国会議員が自ら所有しているという東条英機氏の色紙の話を興味深く聞かせてもらいました。それは、戦争犯罪を追求された同氏が、戦後開かれた国際裁判中に親しい人に送った辞世の句というものです。それは、「絵踏みして 生きるもくやしき老桜 散ると知れや 風さそうまま」というものです。 同氏をウィキペディアで調べてみると、辞世の句というものが列記してありますが、どちらかと言うと品がよく無難なものが多い気がしました。しかし、今回教えてもらったものは、同氏の肺腑をえぐるような叫びが入っているようで、その迫力と生々しさに圧倒されました。この句は、一般には知られているのかどうか気になっています。 |
2014年09月22日 随兵寒合(ずいびょうがんや)を迎えて
![]() それだけ子供の頃から親しんだ祭りですが、最近は行列に参加することも見学に行くこともなくなったのは、我ながら情けないことだと思っています。とはいえ、ちゃんと言い訳も用意してある訳で、富山の「風の盆」を見た以上は、熊本の祭りは品が悪くてしょうがないと言うことになるのです。 もっとも、藤崎宮自体は、天皇からの勅額や重要文化財の神像があるほどの由緒がありますし、祭りでは神が一時的に休憩される御旅所で能が奉納されるなど深い歴史があることも事実です。先日から県立美術館で開催されていた「藤崎宮の宝物展」では日頃は見ることのできない勅額や神像を直接目にすることができましたし、御旅所での能の奉納は例年よく見学に行ったものです。 ところで、熊本において最も季節感を表す言葉は、樟若葉(くすわかば)と随兵寒合(ずいびょうがんや)の二つだと思います。前者は5月になり、県木でもある楠に一斉に若葉が芽生え、サクラの季節とは又ひと味違う、新鮮かつ美しい季節の到来を知らしめてくれます。また、後者は「藤崎宮 秋の大祭」(昔は通称ボシタ祭りと呼ばれていました)の随兵行列が練り歩く頃に、熊本は急に秋めき朝晩が寒くなると言われて来たのです。この感覚は私自身身に染み付いており、本当によく当たるというのが長年の実感です。 さて、異常気象続きであった天候は、秋から年末にかけてどうなるのでしょうか。低成長時代の下では、気象条件が消費行動に大きな影響を与えるだけに、長期予報や台風の影響に一喜一憂する日が続きそうです。 |