芭蕉林通信(ブログ)

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2022年12月02日 美しい季節の言葉

 九州では紅葉もそろそろ終わりを迎えようとしている。いつものことながら、鈴懸の径で人間の手のひらのように大きく整った葉を十数枚拾ひ集めた。自宅に帰ってその一枚一枚を古新聞に挟んで押し花にするのだ。と言ってもその過程を楽しむのが常のことであり、出来上がった押し花の取り扱いにはいつも苦労する。それが分かっていながら、美しく紅葉した落ち葉をどうしても放置できない心がある。

 そうした季節の移り変わりを感じるのは自然現象だけではない。日々の暮らしの中で、季節ごとの美しい言葉に出会うことがある。その一つが冬薔薇(ふゆそうび)だ。この言葉は、俳句の季語辞典で初めて知った。その不思議な読み方に感心するとともに、厳しい寒さにもめげずに健気に咲く薔薇の姿が目の前に広がる気がした。

 この写真は昨年の11月末、車内に置いた冬薔薇に外からの光が当たった時のものである。一瞬薔薇は宝石かのような姿を見せてくれた。俳句歴は下手なので恥ずかしくて言えないが、こうした季節の美しい言葉に会える限りはこれからも続けていきたいと思っている。

2022年11月21日 フリースタイル

 先月、ある料亭から月見の会に招待された。無料招待ということで恐縮しつつ参加したが、食べ放題飲み放題の大盤振る舞いだった。それに加えて、地元の能の先生方が謡や仕舞まで披露してくれなんとも風流な一夜となった。

 その料亭には約50名が集まったが、席はフリーということなので連れと何気なくその一隅に座った。後から次々と同じテーブルに人が来るが、いずれも初対面の人たちばかり。新聞社の社長夫人、オーガニック菜園を作っている婦人などとの話が弾んだ。そしてもっとも興味深い人物が能面士のA先生だった。

 私自身が謡と仕舞の稽古を一時していたこともあり、A先生とは深酒の勢いもあり意気投合した。さらに調子に乗って能面を一面打ってもらう約束まで取ったのである。この時ほどお酒に感謝したことはない。そしてつい最近、先生に依頼していた「増女」の面が届けられた。フリースタイルは新たな出会い、チャンスに繋がるものだとあらためて感心している。

2022年10月31日 海がきれいになって・・・

 若いオーナーシェフが経営する人気レストランに寄った時のことである。天草にある、知る人ぞ知る活き魚を扱う店の話になった。魚に大変詳しい店の人が買い出しに来た多くの料理人に最新の魚事情を説明し、季節ごとにまた日ごとに最も美味しい魚を勧めてくれるのである。私もその様子をテレビ番組で見ていたので、自然にその店の話が始まった。

 そこでの裏話が今日の主題である。その店の主人が、最近は海がきれいになりすぎて良い魚が捕れなくなったと教えてくれたそうだ。なんせ食事中の会話なので、その理由までは話が進まず、意味が分からないままレストランを後にした。韓国や中国では今なお良い魚が捕れるのはなぜかと思いながら。

 ところが昨晩のNHK番組「ダーウィンが来た」で放映された「海を支える”砂の魚”珍ライフ」で解答を得ることができた。瀬戸内海のイカナゴが近年激減した理由は、下水道の普及によって海はきれいになったものの、海に必要な栄養分が不足するようになった。植物・動物性プラクトンが発生しなければ、イカナゴはエサ不足で激減し、それを食する中型・大型魚も増えないという逆の植物連鎖が起こっていたのである。その解決策として、地元の漁協や自治体が協力して、下水処理施設から必要栄養素の窒素やリンを含んだ処理水を瀬戸内海に放流し海を復活させた手腕には感心した。地元の有明海や天草の内海ではそうした取り組みは果たしてなされているのだろうか。

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