芭蕉林通信(ブログ)

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2023年01月24日 ドゴン族のはしご

 ある時からドゴン族のはしごを手に入れたいと思って来た。それは目白の「古道具坂田」で教えてもらったからである。その時すでにそのはしごは売れていた。アフリカのマリ共和国に住むドゴン族はその華麗且つユニークな仮面などで知られている。本物のはしごは日本のそれとは違い、一本の丸太に足を乗せる刻みがつけられ作られている。その本物は一度パリの有名な店で見つけたが3mほどのあまりの大きさに買うのを諦めた。しかし、はしごのミニチュアとなれば別問題である。今日はそのミニチュアはしごの話である。

 たまたま古美術のネット販売を見ていたら、偶然に10年来夢に見ていたドゴン族のミニチュアはしごが売り出されていた。この世界は早い者勝ちなので、さっそく電話すると幸いにも先着。4本の内3本を購入することができた。思いのほか値段が安かったこともある。このはしごは大が48cm、中が35cm、小が22cmの高さがある。そしてこれらはドゴン族が亡くなった先祖を迎えるために祭壇に立てかける天からの通路なのだ。

 そんなある日、日本経済新聞の文化欄を読んでいたら日本各地のお盆についての記述があり、ある地域ではお盆の祭壇に小さなはしごを立てかけ先祖を迎えるとあったので驚いた。遠く離れた国、まったく違った文化圏で先祖を天から迎える方法が酷似しているとは思ってもみなかった。遠く離れていて一見無関係に見えながらも人間が行い考えることの類似性。不思議な感覚に襲われた。  

2023年01月20日 ブリコラージュ(器用仕事)

 大学であまり勉強しなかった負い目からか今でも知的未熟さを感じることが多い。つまり知らないことが多すぎる。だからなのか、一方では難解な学問や書物に憧れる性癖がある。例えば哲学や物理学は理解困難、書物でいえばマルセル・プルーストの「失われた時を求めて 上下」やジェイムズ・ジョイスの「ユリシーズ 1〜3」などは読もうとして何度も跳ね返されている。でも興味津々、いつかは理解し読破したいと虎視眈々と狙っている。

 そうした一つがフランスの人類学者レヴィ=ストロースの研究である。そもそも宇宙船地球号が人口増や戦争により危機に瀕している、文明化の名の下に人類が自然を破壊し尽くそうとしているという問題意識がある。レヴィ=ストロースは未開の地に分け入り、未開人と言われた部族の生活や習慣を研究する中でさまざまな発見をした。その一つが「ありあわせの道具や材料を使い自分の手でものを作る」というブリコラージュの概念である。詳しくはNHKテキスト100分で名著「野生の思考」で参照してほしい。

 私としては名前に創造の創の字が入っている以上はブリコラージュは人ごとではない。何か新しいものを、新しい事業を生み出したいとこれまで生きてきたという経緯もある。そこで手近にあるものでブリコラージュの真似ごとをしたのが写真の作品である。胴体は韓国で見つけてきた落ち葉入れ、顔の部分はフランスの古い鳥かご、帽子は朝鮮時代の馬のしっぽの毛で編んだ帽子である。全体を支えているのは真鍮の水筒なのだが、全体で人に見えないだろうか。レヴィ=ストロースからは意味が分かっていないとお叱りを受けそうだが、彼も鬼籍に入っているので天国で笑って見過ごしてくれているかも知れない。

2023年01月06日 年賀状

 かつて勤務していた日本興業銀行では「虚礼廃止」と言い、盆暮れの贈り物や年賀状の類は自粛するよう指導されていた。約50年前のことだから虚礼廃止と言う言葉は初耳だったことは言うまでもない。当時から合理的で良い習慣だと感じていたことを思い出す。しかしながら、ふるさと熊本に帰り家業を手伝うようになってからは、郷に入れば郷に従えで季節の挨拶は復活した。もっとも、部下からの年賀状は嬉しい反面、もらったもらわなかったでえこひいきにならなぬよう気を遣うことでもあった。

 そして私自身は個人的には3年ほど前から年賀状を一切出さなくなった。それまでは自撮りした写真や下手な絵を使って年賀状を作っていたのだが、なんだか面倒臭くなったのである。スマホでのメールやlineで時候の挨拶ができるようになったことも理由に挙げられるかも知れない。あるいは、30年も40年も会わずにいる方に年賀状を出すのもおかしく感じたのかも知れない。

 そういう無礼なことをしながらも、引き続き年賀状を出してくれる友人や取引先がいるのも事実である。そして、今年の年賀状の特徴として、今年を最後にすると宣言する友人や資源保護の観点から年賀状を止めるとの企業が目立った。先に失礼をしている身分としてはさもありなん、わざわざご丁寧に痛み入りますという心境なのである。リスペクトが大事と言われる今日、いろいろと工夫して、大切なご縁を守っていかなければならない。

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