芭蕉林通信(ブログ)

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2023年05月08日 5月の天草にて

 連休中に19歳の若者4人と出会った。一人はヨットハーバーに面したレストランで。天草の女性は素朴で素直、働き者との評判があるが、ホール担当のその女性もハキハキしてメニューの説明は堂にいったもの。地元愛が身体全体から迸り出ていた。

 あとの3人とは日帰り温泉の服脱ぎ場で出会った。一人が私の母校である熊本高校のTシャツを着ていたので思わず声をかけた。聞けば今年入ったばかりの大学の仲良し3人組で旅行中とのこと。初々しい態度に好感が持てた。質問されたので、天草四郎ミュージアムと三角西港の見学を薦めて別れた。

 長女は嘗て上京した大学で「イモ」と呼ばれていたらしいが、私は陰で「田舎のキャデラック」と呼ばれていたとは卒業後に教えられた。都会人にとっては我々親子は垢抜けしていないように見えたのだろう。しかし私だけでもこれからも田舎者で通そうと思っている。いや当時の私には単に19歳の彼らや彼女に感じた瑞々しさや素直さがなかっただけだったのかも知れないが。

2023年04月27日 夢のはなし

 中学生の時、好きな同級生の夢を見て感激のあまりあわてて夢日記を書いたことがある。それなのに最近見る夢は心理学者フロイトに言わせるならば、欲求不満の塊と断じられそうな情けない夢ばかりで誰にも話せない。村上春樹の最新作の主人公は、壁に囲まれた不思議な街で古い夢を読む。大変な仕事だろうなと思う。

 鎌倉時代の明恵上人が書き残した夢日記は今では日本の国宝に指定されている。その内容たるや夢で仏様に会ったとか超真面目なもので、悟りを開いた人には隙が無いと感心してしまう。 NHKの大河ドラマは大体毎年見ているが、記憶違いでなければその第一作は井伊直弼が主人公の「花の生涯」である。安政の大獄を主導した悪役のイメージが強い人物だけに当時は意外なドラマだと感じていた。

 その井伊直弼が真夜中に目覚めて布団から体を起こす場面がある。そして独白するのである。「いま女人の夢を見た。まだ修行が足らない。」と。なんと真面目な人かと見ていて感心したことを覚えている。かつて彦根に旅した時に、井伊直弼の遺品に触れその博学強記ぶりに感心したが、日本の行く末を案じて幕政を担った人物であることは間違いない。さあ今晩もできれば真面目な夢ではなく、欲求不満の固まりのような夢を見たいものだ。

2023年04月11日 孫の質問

  小さい子には驚かされる。先日家族が集まって誕生会を開いたときのことである。隣に座った5歳の孫が突然質問してきた。「じいじは、将来になんになりたいの?」 いやあ驚いたと同時に一瞬頭の中が真っ白になった。古希を過ぎた自分に対してかかる質問が投げかけられるとはまったく想定外だった。

 そこで必死に考えて出したのが、「仙人になりたい。」という訳の分からない答えだった。孫息子に理解できるわけがない。仙人は雲に乗ってどこへでも行けるし、天から下を眺められると説明してもきょとんとしていた。私はそう説明しながらも心の中では、久米仙人は雲の上から若い女性の太腿を見て墜落したという話を苦々しく思い出していた。

 とはいえこの孫の質問は、たとえ古希を迎えた身といえども将来はあり、夢や目標を見失ってはいけないと諭してくれた気がした。将来を老後とのみとらえるではなく、未来に何ができるか考えてみたくなった。黒沢明監督の作品「生きる」の主人公が最後の夢を追いかけたように。

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