芭蕉林通信(ブログ)

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2015年07月09日 石巻の被災地にて

 現地を訪れた7月初旬は、梅雨の中休みともいうべき穏やかな一日でした。案内を買ってくれたTさん自身も3.11の津波に遭遇した人ですから、当日の生々しい話は想像を絶したばかりか私たちを深い悲しみに沈ませるものでした。
 Tさんはショッピングセンターの屋上駐車場で津波を目の当たりにしたのですが、自分の体を鉄柱に結びつけた時には死を覚悟して、足腰の力が抜けたそうです。「死んだ気でやれ」という言葉がありますが、死を意識した時は力が出ないものですと静かに語ってくれました。

 震災時あるいは震災直後の報道写真では、堤防が破壊され、土地が陥没し、家は押し流され、町は瓦礫の山と化していたのですが、3年半経った今では、ただ何もなく広々とした被災地、放棄された家々、その間を縫う様に頻繁に行き交う工事車両があるばかりです。そして、鎮魂の海は今では何もなかったかのように、入り江に海辺に広がっていました。
 あの時には、全国から支援の手や義援金が寄せられましたが、今なお復興には程遠い現状を見て、心は沈みがちになるのはやむを得ないことでした。Tさんの人生観を変え、生活設計をも無にした未曾有の天災に対して、改めて人知の及ばない自然の力を目の当たりにした感を強く持ったのでした。


2015年06月22日 移動販売車はライフライン

   先般、牛深にまで足を伸ばしたことを紹介させていただきましたが、その節近くにある崎津の教会を尋ねました。入り江に面する教会は、周辺の集落と共に世界遺産の候補地になっています。いわゆる「長崎の教会群とキリスト関連遺産」ですが、ここ崎津は長崎県外では唯一リストに入っている場所です。

 その教会近くで移動販売車を見かけました。人口が少なく、高齢者が多い地区では小売店がないか、あったとしても採算が合わずに廃業しているのでしょう。移動販売車には、近所のおばさんんが買い物に訪れていましたが、待ちに待ったものが来たという雰囲気でした。

 これからは買い物難民が増えると言われていますが、移動販売車で採算を取ることは、正直難しいのではないかと思います。私ども地方の食品卸としては、必要物資である食品をどこにでも届けたいところですが、過疎問題は深刻です。買い物難民や仕入れ難民の増加に対しては、地方行政やNPOなどと連携し、社会福祉事業の一環として供給ルートを維持していく必要があるのではないかと思いました。
 最近は、都会では運転手不足による物流問題が指摘され始めています。豊かな地方あっての都会であり、日本であるということを忘れないようにしたいものです。
 

2015年06月15日 趣味を深く語る

 時々、気の置けない経営者仲間が集まり、共通のテーマで話し合う私的な会があります。かれこれ20年続いているのですから、メンバー同士よほど馬が合っていると言えましょう。
 当初は、リストラ研究会と称していましたから、各企業の経営改革が主たるテーマでした。しかし、最近ではテーマが尽きたということに加え、我々も高齢化したことから、健康とか後継者作りとか年相応のテーマに変わってきています。そして今月のテーマが「趣味を深く語る」と言う訳です。

 趣味と言えば、忘れ難い話を二つ思い出します。その一つは、随筆「パイプのけむり」シリーズで著名な團伊玖磨さんの話です。大学に入るために上京し下宿生活をしている時に、團さんの「パイプのけむり」の中に趣味について書いてあるのを見つけました。
 要旨はこうです。趣味とは好きな事をすることなので、時間がかかればかかるほど良い。私はコーヒーを飲む事が趣味なので、自分自身のコーヒーを作ることとした。それで、八丈島に土地をもとめコーヒーの木を栽培した。コーヒーの豆を採集し、焙煎し、自分のコーヒーを楽しむことができた、というものです。
 その頃はまだ純粋だった私は、突然趣味に目覚め、自分も自分だけのコーヒーを作ろうと思い立ったのです。とはいえ、実家からの仕送りを受ける身、なけなしの金からかろうじてコーヒーの豆とミルとサイフォン式の湯沸かし器を購入しました。そして、下宿の部屋で悪戦苦闘の末に、一杯のコーヒーを作り出すのに約1時間、飲んで30秒。以来、あまりのばかばかしさにコーヒー作りの趣味は瞬く間に終了したのです。

 もう一つの趣味の話というのは、大きな会社で新社長が誕生すると、よく雑誌などに掲載される社長紹介欄でのことです。大体は趣味が聞かれており、人によっては自分の趣味は仕事だと答えていることがあります。私が若い頃は、仕事を趣味にするとは何と幅の狭い人間だと批判的に思っていたものです。しかし、長年社会人としての経験を積んできますと、仕事が趣味と言えるのは最高ではないかと考えが変わってきました。
 なぜならば、朝起きて、今日も趣味の仕事ができるぞ楽しいぞ、と思えたならば最高です。朝起きて、わあ今日もいやな仕事に行かなければならない、と思うのとは雲泥の差です。
 さて、私の場合は、上記のどれにも該当しないようです。私の浅く広い趣味は、日替わりメニューのようで、実に落ち着きのない日々を送っているのです。ですから、私には「趣味を深く語る」ことは全くできなかったのです。

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