芭蕉林通信(ブログ)

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2023年10月16日 秋の気配あるいは記憶

 中学生の頃鼻中隔湾曲症と診断され、決まっていた手術を直前になってキャンセルしたことは既述した。理由は顔の表面をベロリと剥いで鼻の骨を削ると聞いて恐れをなしたからだ。そのせいか、金木犀の香りが風に漂って来るとかコーヒー豆をドリップした時甘くて苦い香りがするなどという素敵な体験は今もって縁がない。

 考えてみればこの病名もしかりだが、意外と難しい言葉は一度記憶すると頭から離れないことが多い。かつてサンヨー食品が九州限定で発売したラーメン「とっぱちからくさやんつきラーメン」や大塚製薬の商品コンセプト「ニュートラ・シューティカル」などがそうだ。簡単な言葉は記憶に残らない一方で、努力を要した記憶は長く残る。職人の技にしても、そうした過程を踏んで初めて本物になるのだろう。いわゆる体得というやつだ。

 問題は古希を迎えて昨日のことが思い出しにくくなっていることだ。特に休日は自宅に籠って何ら特別なことをしていないというせいもあろう。クレジットの利用案内が金額だけだった場合は、どこで何を買ったか思い出せずに焦ってしまう。クレジットの不正使用もあるとか聞くと、それこそ灰色の脳細胞(アガサクリスティーの小説に出てくる私立探偵ポアロの口癖)が欲しくなる今年の秋なのである。

2023年10月11日 悪夢

 ネットフリックスのオリジナルシリーズでは主にファンタジー分野の映画を観ることが多い。社会派ドラマは現実的かつ教訓的に過ぎるし、戦争映画は身につまされ観るに堪えない。ホラー映画に至っては怖くて観る人の気持ちが分からないぐらいだ。とはいえファンタジー映画だとどうしても悪夢がつきものである。シリーズ「SANDMAN」は、まさに夢を司る夢の王が主人公であり、ホラー映画ではないが残酷な場面には事欠かない。ホラー映画との違いは追い詰められて殺されるか、あっさり殺されるかの違いぐらいかと勝手に解釈している。

 さてこの私も昨晩悪夢を見てしまった。私はどういう訳か熊本から大分まで歩いて九州横断している。やっとたどり着いた大分で、そこに住む弟か息子に一夜の宿を頼もうとしている。取り出したのは最新鋭の携帯電話だったが、どうしても電話の仕方が分からない。周りの人に教えてもらうがそれでも電話ができない。こうなったら自宅に電話して大分の電話番号を聞くしかないと思い、やむなく公衆電話を探す。すると古い回転式ダイヤルの公衆電話が見つかった。しかもそこには年老いた案内人がいる。案内人に教えてもらいながら、震える指でなんとかダイヤルを回し自宅を呼び出した。

 幸いにも家人が出てきたので困り果てている現状を説明していると、突然割り込み電話が入った。某同級生が「鶴屋に入っている店なんだけど・・」などと話し出すので、後ですぐに折り返し電話をするからと断り、自宅との回線に戻すともうすでに応答はない。というところで夢が覚めた。最新機器に取り囲まれている現代社会、あなたはいつまでそれに追いついてけるかと暗示された思いだ。これこそ現代の悪夢と言わずして何と言おう。

2023年10月02日 庭で見つけた小さい秋

 我が家の小さな庭にも目を凝らせば意外な発見がある。残暑の厳しい9月は西日もまた肌を焼くような強さだった。そうした中でも季節は少しづつ巡っているらしい。小さな生き物を見つけた。

 一つはアゲハ蝶の幼虫である。庭の隅にある一本の木の葉をムシャムシャ食べていた。観察しようとそのまま放置していると、いつしかサナギになった。サナギを家の中に入れて孵化の様子を見ようと思ったが、かわいそうなのでこれまた放置した。ある日アゲハ蝶は飛び立っていた。庭を飛び回るアゲハ蝶の一羽が我が家生まれかと思うと実に愛おしい。

もう一つはミノムシ。庭師がおしゃれな装いのミノムシを見つけた。確かに身につけている落ち葉の色や形が複雑で、しかもその重ね着の様子が美しい。そこでサナギの抜け殻とミノムシを共演させることにした。かくして部屋の片隅に小さな秋が出現した。

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