芭蕉林通信(ブログ)

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2023年07月26日 「頭」と「心」の柔軟体操

 今年はハリウッドのアクション俳優ブルース・リーの生誕80周年とか。かつて「燃えよドラゴン」や「死亡遊戯」といった映画に胸躍らせたことを思い出す。香港出身だったこともあり、香港の民主化運動では彼の言葉「水であれ」が象徴的な言葉になっていたとは初めて知った。ブルース・リーの有名な言葉「Be water , My Friend .」から来ているのだ。また他にも「考えるな、感じろ」という言葉を残している。

 以下はやや専門的な話で恐縮だが、古代中国の軍略家・孫子や老子との関連性である。ブルース・リーは今から2500年も前の中国の兵法書「孫子」や老子の「道徳経」を学んだに違いない。なぜならば、武術家であり俳優であった彼が、戦いの心構えや方法論を中国の古典から学ぶのは当然のことだからである。そこには水の譬えもあれば作為を捨てた後の無為の境地も示されている。

 私の日頃の運動習慣としてはテレビ体操やジムでの柔軟体操、筋トレなどがある。しかしブルース・リーの言葉を味わっていると、さらに必要なことは「頭」や「心」の柔軟体操ではないかと思うに至った。こだわらず、かたよらない水のように柔軟な「頭」と「心」を持つためには、よほど注意して「頭」と「心」の柔軟体操をしなければならない。

2023年07月18日 捨てた物・捨てなかった物

 断捨離やトキメキ整理法など不要な物の整理術が世間を騒がして久しい(最近、少し下火か?)。ゴミ屋敷は言語道断としても、世の中には片付けが得意でない人は確かに一定数いる。かく言う私も整理整頓を苦手としている。言い訳としては、無秩序の中にも秩序はある。

 とはいえこれまでにエイヤとばかりにまとめて捨てた物にスーツや服がある。雑誌がある。還暦を迎えた時には社外の公職の9割方は捨てた。その代わりに多くの自由時間を得て儲かった気がした。

 捨てなくて良かったと今でも思うのはなんと言っても本類である。読んでない本、もう一度読みたい本、調べたい本が手元にあるのは老後の楽しみの一つだ。そして大学時代に買い集めたLPレコードが約80枚。安いレコードプレーヤーを購入して50年ぶりに聴く曲は青春時代にタイムスリップさせてくれる。LPジャケットのデザインには味があるし、ああーほんとうに捨てなく良かったと思っている。

2023年07月03日 今が一番幸せ

 美術史家の気谷誠著「西洋挿絵見聞録」を読んだのは新聞の書評欄で紹介されていたからである。大体読む本の半分くらいは書評欄で、あとは本屋や古本屋の店頭で見つけることが多い。この本で学んだことは、18世紀から19世紀にかけてのヨーロッパでは、愛書家とは仮綴の本を買っては自前で豪華な革装を施し、世に一つしかない本を愛蔵したということである。それに比べると、私などはただ大衆向けの本を集めているだけだと分かり少しがっかりした。

 ただこの本の短いあとがきには別の衝撃を受けた。気谷氏は55歳で急逝したが、あとがきはその5日前に書いたものだったらからである。そして、「今までの自分の人生を振り返り、こんなにも幸せなひとときは無かったような気がする。」と記しているのである。

 そこでふと思い出したのが、約15年前の友人の奥様の葬儀である。友人が葬儀の最後の挨拶で、「妻は、いつも仕事が忙しくて家にいなかった夫からこうやって看病されている今が一番幸せ」と言ったというのである。その時その状況になれば、私もそうした心境になれるのか、しみじみ考えさせられた。

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