2015年04月14日 「そうだったかのう」
![]() 朝の食事時に、子供の「はいっ」という返事はいいねと話していましたら、家人が面白い話を披露してくれました。それは江戸時代の禅僧白隠さんの逸話です。
信心深い父親が娘を連れて白隠さんのお寺に行く内に、娘が悪阻(つわり)となったために、父親は白隠さんを疑い、白隠さんに娘に悪いことをしただろうと詰め寄ったのだそうです。その時の白隠さんの返事が「そうだったかのう」。
父親は赤ちゃんが生まれると白隠さんにその子を預けたので、それから白隠さんの子育てが始まりました。赤ちゃんに米汁を飲ませ、托鉢には赤ちゃんを連れて行きました。そうした白隠さんを見ていて、母親はたまらず父親に真実を話したそうです。父親が白隠さんに平謝りしたのは当然のことです。
家人は、白隠さんの「そうだったかのう」という答えが素晴らしいと言うのです。私もその話を聞いていて、相手を非難するでもなく肯定するでもなく、そのまま受け入れる態度が素晴らしい、誰にでもできることではないと感心しました。 先日は現代の世界で大変に影響力のあるというベトナム人の禅僧ティック・ナット・ハンのテレビ番組を見ました。特にインター・ビーイング(相互依存制)という師の教えに感銘を受けました。今週号の日経ビジネスに掲載されていた松下幸之助さんの言葉「相手が生きれば自己も生きる」に相通じるなと思いました。人生を極めた人の言葉は、同じものに収斂されていくものなのだと感じた次第です。
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2015年04月06日 留学するタクシー運転手
![]() 春の京都でタクシーに乗った時に聞いた話です。この会社では、増え続ける外人観光客に対応するために、毎年数名のタクシー運転手を英語習得のために留学させるそうです。従来はロンドンへ、最近はオーストラリアに留学させているそうですが、人材育成に努力するこの会社の姿勢にいたく感心しました。
というのは、タクシー運転手はどちらかと言うと定職に付く機会がない人が選ぶ職業だという先入観があったからです。留学させるとなると、渡航費や授業代、留学中の給与の保証、帰国後の仕事継続の有無など経費面に限らず経営上の難問が多くあると思います。
さすがに世界の京都です。そうした考え方はもはや古くさいとばかりに、タクシー会社が留学制度を運用している訳です。社員の教育は、会社側に人材を育成したいという強い意志とそのコストに堪えるだけの余裕があるという証です。将来を見据えて先行投資をしていく会社の姿勢は素晴らしいなあと思いました。
さて、我が社においては将来を見据えていかなる教育制度を作り運用すべきか、新しい課題を与えられた京都の旅でした。
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2015年03月31日 身近にある火山と
![]() 阿蘇や久住は野焼きのシーズンを迎えました。野焼きの火が風を起こして原っぱや山裾を走る様は、勇壮であり且つ神秘的な感じがします。
ところで私には、毎朝車を運転して通勤する道路があります。その道路が橋にかかると、天井川のせいか橋は一挙に高みを目指し、坂を登っていくことになります。橋が一番高い所でいつもする日課が島原の普賢岳を見つけることです。
ある時、左手に普賢岳、右手に阿蘇山、前方には金峰山が同時に見える事に気がつきました。昨日などは、火砕流で多くの人名を奪った普賢岳が赤茶けた荒々しい山頂を見せていたかと思うと、阿蘇の中岳からは活発な火山活動を象徴するかのように、白い噴煙が西風に乗って高森方面に棚引いているのが見えました。また、夏目漱石が小説「草枕」の舞台にした金峰山は火山活動を休眠したまま、山頂まで深い緑に覆われています。
こうした景色を見ながら、熊本での生活は火山の近くで営まれているということに改めて感じさせられました。つまり、熊本での生活や仕事は、地殻変動による地震だけではなく、火山活動による災害をも常に意識しておく必要があるということなのです。
夏目漱石の弟子で物理学者の寺田寅彦は「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉を残しています。もっともビジネスの世界では、天災だけでなく、人災や事業環境の激変などにも注意をしておく必要があるのは当然です。とはいえ、大自然に囲まれ、気候は温暖で、歴史文化の深みもある熊本が、住み易い地であることは日々自覚しています。
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