2020年06月03日 巣ごもり読書
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そうした時に娘から薦められた本が、昨年アメリカで500万部を超えるベストセラーになったという「ザリガニの鳴くところ」である。読んでいるうちに主人公の女性「カイヤ」が愛おしくなり、感情移入したまま昨夜1時過ぎまで読んで衝撃的な結末に唖然とさせられた。なるほど全米で読まれたはずだと思った。その本の一節が記憶に残った。 「本物の男とは、恥ずかしがらずに涙を見せ、詩を心で味わい、オペラを魂で感じ、必要なときには女性を守る行動ができる者を言うのだ。」 積み上げた本の中から取り上げた本の一冊に「イギリス名詩選」がある。かつてイギリスの国民的詩人ワーズワースの住む湖水地帯に行き、本人の住んでいた家にまで行ったので懐かしかったこともある。その本で取り上げられているヴィクトリア朝の詩人マシュー・アーノルドの詩「ドーヴァー海岸」の一節はこうである。 「われわれは、今、夜陰に乗じて激突する無知の軍勢があげる、闘争と潰走の阿鼻叫喚の声に呑まれ、なすすべもなく、暮れなずむ荒野に佇んでいるのだ・・・・・。」 コロナの感染に怯える人類、無知無責任なリーダーに翻弄される不幸、に涙流す人があまたある現代社会を思い起こさせる詩と思った。確かに良い詩には、時空を超えた伝播力がある。 (写真は、英国湖水地帯にあるワーズワースの家) |
2020年05月25日 行ける時に行っておく、やれる時にやっておく
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旅は体力がある若い時はできるだけ遠い所を目指し、体力がなくなったら近場を巡った方が良い。実際、エジプトに行った時は灼熱の砂漠を歩かされ、ペルーでは高度3千メートルを超える高地で身体がおかしくなった。それでも今は記念として買った品物に囲まれて、楽しい思い出に浸ることができるのである。 写真に写っているのは、スペインで買った手作りのチェスセットとエジプトの砂漠で拾った3個の石の絵だ。こうした物を身近に置いていると、見るたびにグラナダのアルハンブラ宮殿やバルセロナのガウディの建築群、アレキサンドリアからの帰途に遭遇した激しい砂嵐などをまるで昨日のように想い出す。行ける時に行っておく、やれる時にやっておけばもって悔いなし。 |
2020年05月18日 逆風に立つ
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対して日本は感染者の抑え込みに成功しつつある(ように見える)。今後の問題は自粛措置を緩めた時から始まる感染の二波への警戒であり不安だ。それにしても、今回のコロナ騒動は日本文化の特殊性を教えてくれた。まず日本人の清潔好き、家に入る時の靴を脱ぐ習慣、握手やハグ・キスなど肌を接する挨拶儀礼がないこと、マスクを厭わない性癖、家族での集団会食の機会が少ないことなどが思い浮かぶ。上下水道が整備され手洗いなどが容易にできるインフラもある。発展途上国の国民や難民の中には手を洗う水さへない人が多い。さらに言えば、日本政府が頼りないので国民一人一人が自らの命を守るために慎重に行動をしている可能性がある。日本政府はPCR検査すらまともにできない状況を放置したまま出口戦略を模索しているが、不安を抱えたままの国民の安心なくして経済活動が元どおりになるなど勘違いしてもらっては困る。 企業経営へのコロナの影響は業種や事業構造によりまだら模様だ。報道によって初めて個別企業の深刻さを知ることが多い。コロナによる影響の第1波は運不運に属するが、第2波はコロナへの対応力によって差が出ることになる。そして年度後半から来年にかけては、世界が出口戦略を模索する中で企業が新たな世界に適応できるかによって命運が決まる。第二次世界大戦時海軍の飛行教官だった父が言っていたことだが、空母から飛行機を飛び立たさせるために空母は向かい風を受けて全速力を出すそうだ。あえて逆風に向かってこそ短い滑走路から離陸できる。「逆風に立つ」とは逆風だからこそやるべきことがある、やれることがあるいう意味があるのだ。 |