芭蕉林通信(ブログ)

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2019年01月30日 一羽の鴛鴦(オシドリ)

 オシドリ夫婦と言えば仲の良い夫婦の代名詞だが、実際のオシドリはあまり仲が良くないとか聞いたことがある。かつて読んだ鳥の本には浮気ばかりする鳥が紹介されていたので、鳥の世界も人間同様にいろとりどりなのであろう。先週家の近くを散歩していたら、橋の上で見知らぬ人に声を掛けられた。川に野生のオシドリがいると言う。なるほど、鴨の夫婦と一緒に一羽のオスが川の流れに乗って遊んでいる。どういう訳かメスはいない。それにしても綺麗な鳥である。オシドリが見知らぬ人との縁を作ったという印象が残った。

 さらにオシドリを見ていて中学時代の英語の教科書を思い出した。鳥を観察することをバードウォチングというが、その方法についての英文であった。観察したい鳥には太陽を背後にして近づくべし。太陽に向かって鳥に近づくと鳥はシルエットに見えて観察できないとあった。そのシルエットのスペルsilhouetteが長くてヘボン式綴りとは違うと感じたことにより50年後の記憶に残ったのである。

 安土桃山時代の一巻の書には金箔をあしらったオシドリの絵がある。夫婦円満の象徴としてオシドリは昔から特別な存在だったのかと想像が膨らむ。真実はともかく夫婦仲の良いオシドリを信じることは、ぎすぎすした現代社会では決して悪いことではない。信じれば救われる、不合理ゆえに吾信ず。理屈はどうであれ、一人でいるよりは二人仲が良いことにこしたことはない。それにしても、川のオシドリにはどうしてメスが一緒にいなかったのだろう、繁殖期と子育て期を終えて旅立とうとしていたのだろうか。

2019年01月21日 村上隆さんと目白の坂田さん

 昨年12月15日から熊本市現代美術館で世界的な現代アーティスト・村上隆さんの個人コレクション展「バブルラップ」が始まった。「笑う花シリーズ」などの作品で有名な村上さんについては、それまではルイビトンのバッグのデザインをしたことぐらいしか知らなかった。ところが、一昨年に横浜で開催された村上さんのコレクション展「スーパーフラット・コレクション」を見て、その収集の質量の膨大さに目を奪われる経験をしたのである。

 村上さん本人へ会いたさ一心に開催前日のトークショーに馳せ参じると、立ち見席が出るほどの盛況ぶりだった。熊本市民も見る目があるじゃんと内心感心した。本人の1時間余りの話は、世界の現代アート事情が分かって興味深かった。展覧会場で目を引いたのは東京の目白にある「古道具 坂田」の店の再現である。坂田さんは知る人ぞ知る古美術界のカリスマだが、私もいつしかその店を尋ねるようになり、これまで延べ20回ほど坂田さんとお話している。飾らない性格、飄々とした風格、誰にも気さくに接してくれるのが坂田さんの特色である。

 再現された店は馴染みの私から見ても雰囲気を捉えている。とはいえ、写真で確認すると、やっぱり本物の枯れ方はすごい。スケールは実際の二分の一ぐらいだが、店の空気感、材質感を再現する努力の跡は感じられる。これも一種の芸術作品かと思ってしまった。その場には村上隆さんが坂田さんから購入した物が多数飾られているのが楽しい。期間中あと2回は見に行くつもりだが、坂田さんの店の素晴らしさに気づく人は何人ぐらいいるのかなあと想像している。

2019年01月15日 神の力の是非

 イスラエルの歴史学者ユベル・ノア・ハラリ氏のベストセラー「サピエンス全史・上下」は、情けなくも下巻途中で読み止めてしまった。そうしたら、同氏の新著「ホモ・デウス」がさっそく世界で話題になっているらしく、年末か新年かにNHKで特集が組まれていたのでさっそく視聴した。彼はかつてのアメリカの未来学者、アルビン・トフラーを思い出させる存在だ。その執筆の速さ、内容の斬新さに驚かされる。

 内容をかいつまんで言えば、地球の歴史40億年で初めてと呼べる大変革が起こる。それは人間が、神のみが持ち得ていた力を獲得し「ホモ・デウス」になるということ。神の力とは人工知能(AI)、バイオテクノロジー、人体拡張の三つである。という説明を聞きながら、「どういうこと?」となかなか話に付いて行けない。

 その後、いくつかのニュースや実体験から「ホモ・デウス」とはこういうことかと感じることがあった。AIでは、中国のJ.Scoreという事例。個人の信用度が点数化され、若者は点数次第で結婚相手を決めたりする。点数を上げるために日頃の活動が厳しく制約される。バイオではゲノム編集の事例。遺伝子を組み替えることにより理想的な赤ちゃん、即ちデザイナーベイビーを産むことができる。人体拡張の事例。北欧のある国ではマイクロチップを人体に埋め込み、クレジットカードを持参せずに決済が可能に。アメリカでは脳に埋め込むチップが実用化されつつある。ロボットスーツを身につければ、重いものを簡単に運べたりする。  そして、それらの行き着く先は人間にとって決して幸せな世界ではないということなのである。

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