芭蕉林通信(ブログ)

HOME > 芭蕉林通信(ブログ)

403件〜405件 (全 738件)   <前の3件     ・・・   131 | 132 | 133 | 134 | 135 | 136 | 137 | 138 | 139  ・・・   >次の3件

2016年09月12日 随兵寒合(ずいびょうがんや)

 地域には地域特有の美しい表現がある。地元熊本で言えば、「随兵寒合」がその筆頭ではないか!?因みに、読みは「ずいびょうがんや」であるが、意味が分かりにくいのは地域ならではの歴史や文化が背景にあるのだから仕方がない。さて「随兵寒合」の意味とは、地元に古くから伝わってきた藤崎宮大祭に関するものである。私が子供の頃は通称「ボシタ祭り」と呼んでいたこの祭りは9月半ばに開催されるのが通例だった(今は9月の不定期日)。不思議なことにこの祭りが始まると、朝晩がめっきり秋めいて一挙に涼しくなるのである。因に、随兵とは祭りの先頭を行く甲冑姿の侍の行列のことを指している。

 若い人と時候の挨拶をしていて、「やっと涼しくなりましたね」と言われたので、つい「随兵寒合だものね」と答えたら、全く分かってもらえなかった。言葉は生き物だから、使用されなければ死語となっていく。今日まで地球上で数知れない言語が使われなくなり、忘れられていったことを思う。言葉がなくなるということは固有の文化も同時に失われるということだ。

 地域の特徴ある風景がなくなるように、地域固有の美しい言葉がなくなるのは悲しいことだ。こういう私にしても、東京でしばし生活したおかげで日頃は標準語で話している。これからはできるだけ方言を使い、歴史的文化的な背景のある言葉を若者に伝えていきたい。

2016年09月06日 バンコックの土産話

 久しぶりのタイには夕方4時頃に到着した。すぐにバスでバンコック中心地にあるホテルに向かう。今は雨季ということで空はどんよりし厚い雲で覆われている。最初に受けた洗礼がバンコックの有名な車の渋滞だ。ガイドさんによると、今年になってバンコックが道路の渋滞で世界ワーストワンになっということで先がおもいやられる。そして案の定三日の滞在中、まさに渋滞との戦いに終始することになった。 

いくつか気になった点があった。一つはテロへの不安である。さすがに空港に着いてしばらくは空港周辺をキョロキョロし不審者がいないか気になった。次に軍事政権による国政の安定度である。軍政への移管前に頻繁に起こった、国論を二分するような激しいデモは今や影を潜めている。3番目が国民の尊敬を集める国王の健康状態。すでに国王と王妃は加齢により長期入院中であった。

 バンコックは広い平野が極端なほどの低地のため、2011年の大水害で日本を含む多くの企業が洪水の被害にあっている。今回は水産加工品を全量日本へ輸出している合弁企業を訪問した。驚いたのは、作業員の9割がミャンマーからの出稼ぎ労働者であり、最低日給が300バーツ(日本円換算で約900円強)という点である。現時点では、むしろ中国よりも人件費が割安になっていないかという疑問が起こった。

バスで街を通り抜ける度に見かけたのが多種多様な屋台である。決して清潔とは言い難い屋台が多く、ガイドからは屋台で食べる事を厳に戒められた。ということで、皆で食事をした後は何もすることがなく、ホテルの部屋で時間をつぶした。おかげで滞在中に6枚のスケッチと3句ほどの俳句ができたのはタイに行った甲斐があったというものである。

 今回は団体旅行のために、トム・シンプソン宅や骨董街に行けなかったのは残念だったが、象に初乗りすることができたのは良い思い出となった。  

象使い足裏白き残暑かな

2016年08月30日 物に執する

 身近な物を絵に描き初めて、今月には二冊目のスケッチブックに突入した。下手な絵を人に披露すると、大概の人からは自分は絵を描けないと返事が返ってくる。しかし誰にでも幼稚園や小・中学校時代には図工の時間があり絵を描いたり工作をしたりしたはずだから、大人になってからは絵を描いたことがないというのが正確な返事と言えるだろう。つまり、誰にでも絵を描く潜在能力はあるのである。  

今日の絵は木製のオルゴールを描いたものである。曲はSpinnig Reel が入っている。木馬の一つには乗り手がもういない。廃品すれすれの品物だが、少し手入れをしたら曲が流れ木馬が回転するようになった。このオルゴールを手に入れるまでの忘れ難い体験がある。

 あれは、かつて勤めていた銀行の調査部時代のこと、自身初めての海外出張をした時のことである。調査テーマは「アメリカにおける日本企業の不動産投資」であり、西海岸は大手会社の幹部と同行、東海岸は単身出張となった。ロサンゼルスからニューヨーク行きの飛行機の中で機内誌を読んでいると、首都ワシントンにあるオルゴール店の記事が目に入ってきた。ニューヨークの次は、ワシントンの日本大使館を訪問する計画だったので、そのオルゴール店に行こうと決心した。

ところが、ワシントンの店を一人で歩きながら探していると、黒人に至る所で話しかけられて怖い事といったらなかった。それでも根性を振り絞りオルゴール店を探し当てるとドアは二重三重の鍵で閉まっている。呼び鈴を押してやっと中に入れてもらい、必死の想いで手に入れたのがこの小さなオルゴールという訳である。

 こうした経緯がある品物だから、たとえ壊れて動かなくても曲が流れなくても私にとっては大切な宝物なのである。身近な物をスケッチするという行為は過ぎ去った過去の記憶を取り戻す行為と相似している。

403件〜405件 (全 738件)   <前の3件     ・・・   131 | 132 | 133 | 134 | 135 | 136 | 137 | 138 | 139  ・・・   >次の3件