2011年11月09日 フランス視察報告(第9回)
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■モン・サン・ミッシェル(Mont aint Michel)
![]() ![]() 聖ミカエルをフランス語で言うと、サン・ミッシェルとなる。 フランス国内には世界遺産が33と多くを数えるが、干潟の上の岩山に708年以来数百年の歳月をかけて建設された修道院「モン・サン・ミッシェル」はその中でも、一二位を争う人気スポットである。
アヴェラシュ司教の夢の中に聖ミカエルが3度現れ、お告げを得たことにより、修道院としての建設が始まったとされる。その後増築を繰り返し、イギリスとの百年戦争の時には海に浮かぶ要塞の役割を果たした。
今では観光客の利便のために、モン・サン・ミッシェルまで干潟を埋めて自動車道路が整備されている。しかしそのために、潮の流れが遮られ土砂が堆積することとなり、新たな景観上の問題を惹起させている。近年フランス政府は、かつての姿を取り戻すべく道路を除去し架橋するよう決定したが、なお反対意見も根強く、現在まで工事は開始されていない。
訪問した日は幸いにも大潮の日にあたり、モン・サン・ミッシェルが海に浮かんで見えるという本来の姿に接することができた。観光客は日本人はもちろんのこと韓国人や中国人などアジアからの訪問客が目立っていたが、世界中から関心のある人たちが集まっているように思えた。
昼食は、名物のオムレツを有名レストランで味わった。店内には、壁の至る所に政治家や芸能人、スーパーモデルなどの写真やサインが掲示されていた。中には、現フランス大統領のサルコジ氏、元イギリスの首相のサッチャーさん、日本の画家藤田嗣治さんの色紙などもあり、多彩なお客が訪れているのに驚かされた。
■パリ(Paris)
言わずと知れた世界の都である。
かつて華やかな宮廷文化が花開いたが、フランス革命やナポレオンの登場など世界史を揺るがす数多くの事件の舞台となった。「パリのセーヌ河岸」として世界遺産に登録されていることでも分かるように、市人口210万人、都市圏人口1184万人の大都市でありながらすべてに洗練された街である。
都市としての知名度に加え、美しい街並みや石造りの建物、エッフェル塔やルーブル美術館のガラスのピラミッドなど新旧折り混ぜて、落ち着いた街並みを作っているのはさすがである。多くの美術館やブランドショップ、カフェなど観光資源には事欠かない。
半日、サン・ジェルマン・デ・プレ地区を散策した。ロマネスク様式の教会の横道に入れば、おしゃれなブティクやアートショップが多い地区である。通りにはカフェも多く、狭い路地と共にいい雰囲気を醸し出している。
アートショプの中で目立つのはアフリカ芸術を扱う店の多いことである。ピカソもいち早く、アフリカ芸術のプリミティブなパワーに着目した一人だが、名画「アヴィニヨンの娘たち」の表現に結実させた。これは、アフリカからの移民が多いことと無縁ではない。フランスのかつての植民地が独立した際、フランス語を習いフランス系企業で働いていた人たちが大挙してフランスに移住したのである。
この日、カフェ文化を味わおうと思い、サルトルが通ったというカフェに行った。歴史を感じさせる店内は、サルトルが利用したという落ち着いた2階とは異なり、1階の屋外席は満席という賑わいぶりであった。屋内席には常連さんの専用席が用意されており、パリの人たちの生活の一部になっていることを知らされた。
また、パリ郊外には日帰り観光コースとして、フォンテンブローやジョベルニーなど魅力的な場所が散在しているのも嬉しい。
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2011年11月08日 フランス視察報告(第8回)
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■ブールジュ(Bourges)
中部の都市ブールジュは人口7万人余りで、古代ローマ時代からの歴史を持つ。
1255年に完成したゴシック・スタイルのサン・テチエンヌ教会は、1992年に「ブールジュ大聖堂」の名で世界遺産に登録された。
教会の周囲は旧市街が広がっており、路地に入れば石畳の道、花や緑に飾られた広場、歴史を感じる住居があり、中世の街に迷い込んだ感がある。公共の場には、至る所に花が飾られており、フランス国内共通していることだが、美観に対する配慮に大変感心させられた。花を飾ると言う点では個人の家も例外ではなく、玄関や庭に季節の花々が見られるのも観光客にとってもたまらない魅力といえよう。
■ロワール渓谷(Loire valley)
ロワール川沿いに優美な中世の城が点在する。ブドウが栽培されており、有名ワインが作られている。 アンボワーズは,イタリアからレオナルド・ダ・ビンチが招かれ終焉を迎えた場所である。近くにあるシャンボール城の二重らせん階段はダ・ビンチの設計したものと伝えられており、ダ・ビンチの多才ぶりがここでも伺える。
代表的なものだけでも、アンボワーズ城、ブロワ城、シャンボール城、シュノンソー城があり、他にも数多くの城が残されている。個人的にはルイ15世の愛妾で芸術家のパトロンとして活躍したポンパドール夫人の瀟洒な居城に心惹かれた。
そのうち、シュノンソー城は内部見学したが、前庭に野生の紫色した小さいシクラメンが群生して咲いているのに感動した。城内は5人の貴婦人が住んでいたという来歴から、各部屋に豪華な調度品が残されているばかりではなく、生花が惜しげもなく活けられており、歴史的のみならず美術的にも興味の尽きない城であった。因みにこの城は、世界的な食品メーカーであるネスレ社から某チョコレート会社に持ち主が変わったそうである。
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《フランスのエネルギーについて》 フランスは原発大国である。電力の約8割を原発に依存しており、イタリアやドイツに現在も電力の輸出をしている。
3月に東日本大震災で福島第一原発の事故が起きて以来、日本国内のエネルギー政策が曲がり角に来ている。その際、フランスの原発依存を推進理由に挙げる場合があるが、今回のフランス視察を通じ、両国の原発環境に大きな相違点があると思った。
日本は国土の割りに平野部が狭く、地震の巣とも言える弓状列島である。一方フランスの国土面積は日本の1.4倍、人口はほぼ半分、平野部が広いために自ずと日本に比べ人口密度は低い。おまけに活発に活動している火山が少ないことを考えれば、日本よりも格段に立地環境に恵まれていると感じた。ドイツは脱原発を決めたが、火力発電に使用する石炭が国内で調達できるという点で日本とは多いに異なるということを認識しておく必要がある。
加えてフランスは、省エネルギー政策の一環としてレンタルサイクルやレンタルEV(電気自動車)、また太陽光発電などに積極的に取り組んでいる。日本においては、国民の節電意識を高めつつ、エネルギー政策の根本的な改革に一歩踏み出さなければならない。
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2011年11月07日 フランス視察報告(第7回)
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■リヨン(Lyon)
![]() ![]() 都市圏人口164万人を誇るフランス第二の都市である。古来から物資の集散地、交通の要衝として発展してきた。今日でもパリや隣国スイスのチューリッヒまで約4時間半で行くことができる。 中世では絹織物業で発達したが、最近は重化学工業や金融センターとして発展、活気あふれる都市に変貌した。
他地域と同様、旧市街と新市街に分かれており、旧市街は昔ながらの面影を残すよう努力されているのはさすがである。旧市街は歴史地区と呼ばれ、古代ローマ時代の遺跡に始まり、中世の石造りの街並みが保存されている。この地域の特徴として、絹織物業者や住民が使ったトラブールという建物内の抜け道がある。200カ所を超えるのは、リヨンだけとかで、不思議な空間は一度体験する価値がある。(ここも世界遺産)
街のどこからでも見えるフルヴィエールの丘には、リヨンの象徴である白亜のサン・ジャン教会が建っている。ローヌ河越しに見る教会は、丘の下にある建物群と川面に映って美しい。
街中にはレンタサイクルコーナーがあるが、住民は登録さえしていれば、クレジットカードで使用できるという。ここにも環境に優しい街作りの一環を見た。
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