芭蕉林通信(ブログ)

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2020年10月16日 私と民芸

 いつから民芸に魅かれるようになったのか、今では確とした記憶はない。エッセイストの白洲正子から民芸の提唱者柳宗悦に至ったのか、それとも浜田庄司、河井寛次郎の焼き物から日本民芸館に繫がったのか、どうしても思い出せない。あるいは、朝鮮陶器の収集から柳宗悦を知ったのか。ともあれ今ではそれなりの民芸運動の理解者になったつもりでいる。上京する度に、不便な所にある日本民芸館に何度も足を運んだ。出雲までドライブした時には、狭い路を辿り、やっとの思いで出雲民芸館に至った。岩国の民芸館に行ったことはもちろんである。

 意外に地元の人が知らないのが熊本にある国際民芸館である。ここには、柳宗悦の後継者の一人であった外村吉之助が収集したコレクションを土台に作品が展示されている。ときどき家族で訪れていたが、4年前の熊本地震に遭い、白壁の美しい建物と貴重な収蔵品が大きな被害を受けた。その時は国際民芸館を寄付先として選び、復興のためにと100万円寄付した。

 目白に「古道具 坂田」がある。知る人ぞ知る名店であるが、当主坂田さんの審美眼で選ばれた品物の数々は一見すると廃品になる一歩手前の物にも見え、その美しさを理解するのは一般的には難しい。しかし、あの白洲正子も坂田さんには一目置いていたのである。そして、やっとの思いで坂田さんから譲っていただいたスリップウェアは、柳宗悦とその民芸の仲間たちが用の美として早い時期に見い出した物であった。その一枚を見る度に、これまでの自分の民芸の長い道のりを思い返している。

2020年10月13日 ドレの版画とスティーブ・ジョブス

 ギュスターヴ・ドレという銅版画家の絵が好きで、本を買い集めている。ダンテの「神曲」、セルバンテスの「ドン・キホーテ」、「旧約聖書」、「新約聖書」である。ドレは歴史画を得意にしたが、劇的な場面をあたかもスポットライトが当たったかのように描く銅版画は、どの一枚をとっても美しく物語の理解を助けてくれる。

 そうした作品の一つが最近手に入れた「ドレのロンドン巡礼」である。「天才画家が描いた世紀末」という副題にあるように、他の本とは違い、近世のロンドンに題材をとった銅版画集である。それに日本人著者が解説をつけている一冊であるが、さっそく面白いエピソードに行き当たった。ドレとアップル創業者スティーブ・ジョブズの接点である。その一節は次の通り。

 「スティーブ・ジョブズは、ipadの発表会で、旧約聖書のモーゼが、文字を記した石板を掲げ持つ場面を描いたドレの画を載せたipadを持って登場したが、それは近代が生んだ最後のモンスターでありながら、すでに日常的な道具となったコンピューターにとって、画像と言葉と身体との再融合こそが、新たなテーマであるという宣言でもあった。」といささか難しい文章だが、ドレの絵を見るにつけ、ジョブズのユーモアのセンスとプレゼンテーション力に脱帽するのである。

2020年10月06日 ハサミを持つ女

 今自分の顔で一番気になるのは眉毛である。昔からたれ目で男らしくないと劣等感を抱いてきた。さらに最近悪いことに目が細くなり眉毛には白髪が混じるようになった。頭髪は少なくなり今や養毛剤は手放せないのだが、どういう訳か眉毛の成長だけは止まらない。いやむしろ眉毛の成長スピードが髪の毛とは反比例して早まっている感じすらしている。

 これがどういう結果をもたらすかと言うと、いちじるしく年寄りくさくなるのである。例えに引くと申し訳ないが、大分県出身の村山元首相の眉毛は格別に長く、両目を塞ぐほどに伸びて垂れ下がっている。老人というより仙人という感があり、それはそれで村山元首相の飾らない素朴な雰囲気と合致している。

 しかしある時のこと、博多の女性がハサミを持ち男性を追いかけている場面に出くわした。「あんたの眉毛は伸びすぎて見苦しか。私に切らせんしゃい!」という訳で多くの男性が若さを取り返していた。その体験があまりにも強烈だったのか、それ以来私はハサミを持った女性に迫られないように、早め早めに自ら眉毛を手入れすることにしている。

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